5話 運命の男
ここまでのあらすじ
大学の、1年生のクラスで、仲良くなった男の子から、恋の相談を受けました。
でも、彼が好きになった女の子は、クラスで、一番カワイクない女の子だったんです。
恋って、どうして、そんなに人を臆病にするんでしょうか?
彼は、いつもは、陽気で、人なつっこいのに、彼女のこととなると、怖じ気づきます。
僕が、どんなに、「彼女に好きって言え」って、言っても、まるで断崖絶壁から、飛び下りろって、言われたみたいになります。
でも、その彼女って、僕には、原始人にしか、見えないんです。
原始時代なら、彼女は、美人だったかもしれません。
でも、今どきの美人じゃないんです。
彼女を、美人だと思うのは、彼しかいないんです。
でも、彼は、世界中の男たちが、彼女に惚れてしまうって、思っています。
「オレなんかが、彼女に似合うと思うか?」とか、聞くんです。
「思わないよ。 おまえ、けっこう、イケメンだぞ?」
「けっこうじゃ、ダメってことか?
最高の男じゃなきゃ、ダメって、ことか?」
「そんなこと、言ってないだろ?」
「だけど、彼女に、似合うとは思わないって、言ったぞ?」
「誰も、似合わないと、思っただけだよ・・・・」
「そうだよな。
彼女、美しすぎるもんな。
・・・・・・・やっぱり、あきらめるかな」
「あきらめるなよ。
彼女にとって、おまえは、運命の男なんだよ。
おまえじゃなきゃ、彼女を幸せにはできないよ」
彼は、感激するんです。
「おまえ、やさしいな。
いい男(やつ)だな」
彼は、しつこく、相談に来て、僕らは、そんな会話を、繰り返しているんです。
正直、僕は、うんざりしてます。
彼が、断崖絶壁だと思っているのは、たぶん10cmくらいの高さなんです。
ー つづく ー

