4話 思い出のために

 

 

 

     ここまでのあらすじ

 

     僕の家の近くに、小さな神社があって、毎朝、手を合わせて、祈っているとてもキレイなお姉さんがいるんです。

 

     僕は、神社の神様に、そのキレイなお姉さんを、僕の彼女にしてほしいと、願いました。

 

     ところが、つい、うっかり、声に出して願っていたら、そのお姉さんに、聞かれていたんです。

 

 

 

   

 

 

    この前、神社で、僕が叫んだために、キレイなお姉さんと、知り合いには、なれました。

 

 

    朝、すれ違うとき、お姉さんが走りながら、僕に、小さく、手を振ってくれます。

 

 

    笑って、小声で、「おはよう」って、言ってくれるんです。

 

 

    でも、僕は、うれしいより、恥ずかしいです。

 

 

    お姉さんに、「僕の彼女になってもらいたいって、願いを、聞かれたからです。

 

 

    もっとも、お姉さんにとっては、子供の他愛(たわい)のない願いとしか、聞こえなかったかもしれません。

 

 

    だったら、神様には、僕の願いは、どう聞こえたんでしょうか?

 

 

    そんな高望みは、聞けないって、思われていたら、どうしよう?って、不安になったんです。

 

 

    つまり、ちゃんと、願いを叶えてくれるつもりなのか?気になったんです。

 

 

    それで、小さな神社で、聞いたんです。

 

 

     

 

 

    「神様は、どう思っているんですか?

 

 

    もちろん、何も聞こえません。

 

 

    神様にだって、何も聞こえていないのかもしれないです。

 

 

    だいたい、神社で、願い事をしたからって、願いが叶うものなんでしょうか?

 

 

    そのうえ、願い事をしたのは、夢の中で、お婆さんに言われたからです。

 

 

    そのお婆さんだって、夢なんです。

 

 

    そんな夢を見て、願い事をしたら、お姉さんに、聞かれてしまったんです。

 

 

    僕は、思い出すと、また叫びそうになりました。

 

 

    恥ずかしかったからです。

 

 

    頭を抱えて、しゃがみ込んでしまいました。

 

 

    そのとき、声が聞こえたんです。

 

 

   『 いい思い出を作るのよ 』

 

 

   そんなふうに聞こえたんです。

 

 

   「でしたら、思い出のために、僕は、生きているんでしょうか?

 

 

    声に出して、聞き返してみました。

 

 

    神様の答えを待ちましたが、学校に遅刻しただけでした。

 

 

         ー つづく ー



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