5話 飛べなかったら、どうしよう?
ここまでのあらすじ
私には、飛んでいた記憶があります。
飛んでいたんですから、飛べるはずなんです。
でも、実際は、なぜか飛べないんです。
それが、不思議でならないんです。
年が明けて、友だちは、みんな、大学の受験で、忙しいです。
私も、みんなに負けないように、絶対に、「飛んでみせる!」って、真剣です。
なにしろ、大学も、行かないし、就職も、しないんです。
絶対に「飛ぶ!」って、決めているからです。
ただ、ときどき、無性に、不安になるんです。
「飛べなかったら、どうしよう?」って、思うんです。
大学を受験する友だちが、不安になって、相談に来ると、「その気持ち、よく、わかる」って、言ってあげるんです。
本当に、よく、わかるんですよ。
私も、不安なんで。
親たちが、「あんた、どうするの?」って、聞くから、「飛ぶから、ほっといて」って答えると、「病院に入れようか?」とか、相談しているんです。
みんなが、大学に入っているのに、私だけ、病院に入っていたら、嫌(いや)だなって、思うんですよ。
それで、この頃は、ちょっと、ノイローゼ気味なんです。
こんなことなら、「飛べる!」なんて願わなきゃ、よかったとか、「歩く人生を受け入れようか?」とか、弱気になったりするんです。
みんな、ちゃんと、ありのままを、受け入れて、生きているって、偉いなって、思っちゃったりするんです。
でも、飛ぶことが、あきらめきれないんです。
飛べたら、どんなに幸せかって、思うんです。
1度きりしかない人生ですから、本当に、やりたいことを、やりたいって、私は、思っているんです。
ー つづく ー

