3話 ママゴト遊び
ひとりっ子だったストロベリーショートケーキにしてみたら、突然、兄弟ができたようなものだ。 うれしくてたまらない。
テオに、ママゴト遊びの相手をやらせる。
花壇から、赤いレンガを運んできて、公園の砂場で、「ジュ-、ジュー」と言って、焼いた真似(まね)をして、テオに食べさせようとする。
「あなたが、いつも、おしごとを、がんばってくれるから、きょうは、こんなに、あつい、ステーキをやいてあげたわ。 たべて、ね」
ところが、テオには、赤いレンガが、赤い羊羹(ようかん)にしか見えない。
食べてみると、やっぱり羊羹(ようかん)だ。
テオは、お父さんの真似をする。
「いい、おにく、だね。 あまいよ」
ストロベリーショートケーキは、テオが、本当に、赤いレンガを食べてしまうのが、面白くてたまらない。
色んな物を、ひろってくる。
「ちょっと、かわった、おさかなが、あったから、これも、やいてみたの。 たべれるかしら?」
どこから、ひろってきたのか、茶色いビールびんだ。
でも、テオには、チョコレートだ。
バリバリ、食べてしまう。
ストロベリーショートケーキは、びんのガラスで、口の中を、切らないか、痛そうに、見ている。
「・・・・あなたって、は(歯)、かたいのね」
ストロベリーショートケーキは、テオのことを、スーパーマンだと思っている。 宇宙人だ。
「おいしそうに、なんでも、たべる、あなたって、ほんとうに、すてきよ。
わたし、あなたが、たべているのを、みているのが、だいすきだわ」
テオは、素敵(すてき)だって、褒(ほ)められると、もっと、食べて見せたい。
それで、公園にあった、ブランコも、すべり台も、ジャングルジムも、食べてしまった。
小さな公園だったけど、淋しいくらいに、ガランとなった。
ストロベリーショートケーキが、泣きだした。
「ばか! どうして、みんな、たべちゃったの?
わたし、ブランコ、すきだったのに!」
テオは、喜んでくれると思って、食べたのだ。
馬鹿(ばか)って言われて、くやしかったから、ついでに、このストロベリーショートケーキも、食べてしまおうかと、思う。
目の前にいる、このストロベリーショートケーキが、一番、おいしそうなのだ。
ー つづく ー

