43話 どうぞ、お気をつけください
ダイヤモンドの加工の工場での事件のニュ―スが流れたあと、なぜかたくさんの人たちが、私に、信じられないくらい親切にしてくださいます。
川で、苔を落とそうしたのですが、私が、川へ行ってきますと言いますと、お風呂というものにも入れてくださいました。
お風呂というのは、私が赤子だった頃、父と母が、よくお湯を張ってくださった桶(おけ)のようなものです。
お風呂に入るたびに、父と母に、洗っていただいたときのことが思い出されます。
私は石でしたから、水で洗っても充分でしたのに、父と母は、わざわざお湯を沸かしてくださったのです。
そして、父と母は、手のひらで、私をやさしく洗ってくださいました。 普通、石などは、藁(わら)で洗ったりするのに、です。 石など、洗う人さえ、いないかもしれません。
私は、父と母の愛情で、洗っていただいたのです。
よく、心が洗われると言いますが、父と母に、洗っていただいたのは、心でした。
父と母の愛情は、曇りも、混じりもなく、純粋で、ただ愛してくださいました。
純粋に愛されること、よりもっと価値のあるもの、などありません。
それは、あなた方の中にもあるものです。
あなた方も、最も価値のあるものを、すでに持っているのです。
もしかすると、私がダイヤモンドになったのも、そのせいかもしれません。 心が、姿を創るからです。
あなた方も、あなた方の中にある最も価値のあるものに気づいたら、ダイヤモンドになってしまうかもしれません。
どうぞ、お気をつけください。
と、言いますのは、なぜか、たくさんの人たちが、押し寄せてくるからです。
私に服をくださったり、住むところを与えてくださったりするのです。 私は、石だったときには、嫌われていました。 ところが、ダイヤモンドになったとたん、大事にされたのです。
私にしてみれば、あなた方の中にも、同じ、最も価値のあるものがありますのに、なぜかダイヤモンドの私の方が、価値があると言うのです。
そして、モデルという仕事や、タレントという仕事をしてほしいと、頼むのです。 CMというものへの出演依頼も殺到しました。
モデルという仕事は、服を着て、写真を撮られるのです。
ダイヤモンドが服を着ているのが、素晴らしいと絶賛するのです。
あなた方だって、私と、まったく変わりません。 最も価値があるものが、服を着ているのです。
もしダイヤモンドに価値があるとするなら、あなた方も、ダイヤモンドに負けないくらいの価値があります。
私からしますと、あなた方が、お互いに、素晴らしいと絶賛し合わないことの方が、不思議なのです。
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