28話 コスモスの花

 

 

 

 Hanaの乳房(ちぶさ)は、乳輪(にゅうりん)と乳首(ちくび)とが、コスモスの花のようだ。

 

 可憐(かれん)だ。

 

 愛さないではいられない美しさだ。

 

 確かに、女性は、美しさで、愛を伝えようとしているのかもしれない。

 

 もっとも僕は、お湯を一杯(いっぱい)に入れて、膨(ふく)らんだ、ゴム風船のようになっている。

 

 つまり欲情(よくじょう)で、興奮しているのだ。

 

 たぶん、ムラムラしているとは、こういう状態(じょうたい)のことをいうのだろう。

 

 月明かりの、森の中で、若くてかわいい女の子が、おっぱいを出しているのだ。 

 

 男なら、ムラムラしない方が異常だ。

 

 理性なんか、月の彼方(かなた)まで、吹っ飛びそうだ。

 

 Hanaは、おっぱいを出して、首を傾(かし)げている。

 

どう? 天国へ行けそう? それとも、全部、脱ごうか? 私の部屋へ行ってもいいのよ?

 

「それじゃ、天国へ行けないよ。 だって、天国より、Hanaさんの部屋の方がいいよ」

 

私を天国へ連れて行ってくれるなら、私を好きにしていいのよ?

 

「みんなが、天国へ行きたがらない理由がわかるよ。 女の子たちが、魅力的(みりょくてき)過ぎるからだよ」

 

 実際、Hanaは、美し過ぎる。 

 

私の部屋へ来る? 行こうか?

 

 Hanaは、上げていた赤い服の裾(すそ)を下ろした。

 

私について来てね? Kinokoに見つからないように、そっとよ?

 

 僕の姿が見えないHanaは、違う方向を向いて、話している。

 

私、天国へ行けるんなら、何だってしてあげるわ

 

「でも、僕は、きっと天国へは行けないよ。 地獄なら、行けるかもしれないけど・・・」

 

 Yukiのことを思うと、胸が痛む。

 

あなたが天国へ行けるまで、何だってしてあげる。 だから、あなたが天国へ行くときは、私も連れて行ってよ? 置いてきぼりにしちゃ、嫌(いや)よ。 約束よ?

 

「そんな約束、できないよ」

 

天国へ行ったら、私にも、あなたが見えるようになるのかしら?

 

 でも、天国へ行くには、愛だと、教えてくれたのは、Hanaだ。

 

 僕は、Hanaを愛するのだろうか?

 

 でも、僕がHanaを愛したら、Yukiは、つらい思いをするだろう。

 

 Yukiがつらい思いをすることが、僕にとっては、本当の地獄かもしれない。

 

 そうだとすると、僕にとっては、Yukiを幸せにすることが、天国なのかもしれなかった。

 

 きっとYukiだって、愛されたいと願っているのだ。

 

 だったら、愛したらいいのだ。

 

 それが、天国へ行くための道なのかもしれなかった。

 

 僕は、その場で、立ち止まった。 たぶん、バイクだったら、時速100kmから、急ブレーキをかけたような感じだ。

 

 Hanaは、家のドアを開けようとして、キョロキョロして、愛くるしい唇に、人差し指を、立てて、当てた。

 

 きっと、声を出すなという仕草(しぐさ)だ。 僕の声は、家の中にいるKinokoには聞こえるからだ。

 

 僕は、そんな仕草(しぐさ)をするHanaが、かわいいと感じてしまう。 

 

 そんな仕草に、女の子は、愛されるために、生まれて来たのだと、感じてしまうのだ。

 

 僕は、大きな溜め息をついた。

 

 正直、残念だ。

 

 このまま、ついて行けば、Hanaの部屋で、僕の中に、一杯に溜(た)まっている、お湯のような欲情を、放出(ほうしゅつ)できるのだ。

 

 でも、それでは、天国へは行けない。

 

 僕は、僕の姿が見えないHanaに、小さく手を振った。

 

「悪いけど、彼女が待っているから、僕は行きます。 Hanaさんは、ちゃんと愛してくれる人を見つけてください。 僕は、ただ、いやらしいだけですから。 Hanaさんを、天国へは連れて行ってあげれないんです」

 

 Hanaは、ドアを開けようとしたまま、僕の気配を感じている。

 

 ところが、Hanaが、うなずいた。

 

 まるで、僕の決心が伝わったような、うなずき方だ。

 

 Hanaには、僕の姿が見えないし、声も聞こえないはずだ。

 

 それなのに、僕の言ったことが、聞こえたように、うなずいてみせたのだ。

 

 その証拠に、Hanaが僕に向かって、僕が、したように、小さく手を振ってみせた。

 

 僕は、驚いた。

 

「え? 僕が見えていたんですか?」

 

 Hanaは、笑っているだけだ。

 

 そのあと、ひとりで、家の中へと入って行ってしまった。