ハンサム・タワーズ見参!「男の世界だ」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

玉石混淆!?秘宝発掘! 新東宝のまだまだディープな世界 より

 

 

製作:新東宝

監督:土居通芳

脚本:葉山浩三

原案:松尾文人

撮影:森田守

美術:加藤雅俊

音楽:三保敬太郎

出演:吉田輝雄 菅原文太 寺島達夫 高宮敬二 大空眞弓 万里昌代 中西杏子 細川俊夫

1960年10月22日公開

 

男の世界だ ハンサム・タワーズ+大空眞弓

 

大学のボクシング部で活躍する吉田猛(吉田輝雄)は、柳瀬港湾会社の社長令嬢・玲子(大空眞弓)と恋仲でしたが、猛の兄が柳瀬港湾の争議で、会社が雇ったと思われる暴力団のチンピラに射殺されてから、二人の間は気まずくなります。猛は大学の先輩で、新聞記者の菅原(菅原文太)の協力を得ながら、事件を糾明すべく柳瀬港湾会社のある土地に向かいます。玲子も猛との仲を修復しようと彼の後を追います。

 

友人の寺島(寺島達夫)が猛を迎え港湾会社に案内しますが、その途中、街中で北島組が暴力をほしいままにしている光景を目にします。その夜、猛はバーで北島組のやくざたちに喧嘩を売られますが、高宮(高宮敬二)という男が助っ人に入り、二人で叩きのめします。数日後、菅原が猛の兄が射殺された際の現場写真を持ってきて、その中に先日バーで喧嘩したやくざたちの顔を確認します。

 

猛と菅原は調査を開始し、直接手をかけたと思われる乙宮(晴海勇三)に辿り着きます。しかし、乙宮は猛を言葉巧みにおびきだし始末しようとします。しかし、またしても高宮が現れ危機を脱します。一方、玲子は猛を父親(林寛)に引き合わせて誤解を解こうとしますが、野崎専務(細川俊夫)の勧めで父親は上京してしまい会えません。

 

野崎は柳瀬社長の指示で北島組の手を使って猛の兄を殺したことを否定しますが、猛は野崎が北島組の車に乗ったところを目撃し、不信感を抱きます。更に降ろす予定のない積み荷に、野崎のサインがあったことで、寺島は野崎を問い質しますが、上手く言い逃れをされます。実は野崎こそ、北島組と裏取引をして、争議のリーダーだった猛の兄を殺した張本人でした。

 

彼は玲子もモノにしようと狙っており、その為には北島組と裏取引をした証拠となる覚書を取り戻す必要があり、殺し屋の高宮を雇って証拠を消そうとしていました。更に、北島(若宮隆二)の情婦の蘭子(万里昌代)が昔の高宮の恋人だったことから、彼女は彼に協力するため、危険を顧みず北島の金庫の合鍵を作り高宮に渡します。

 

ところが、北島の部下が蘭子を尾行し、高宮の隠れ家を突き止めた挙句、彼女が殺されてしまいます。更に高宮も野崎の裏切りに遭い、死の危険に曝されます。北島と野崎は邪魔者を消すべく、玲子を誘拐し、彼女を囮にしておびき出そうとします。一方、いきり立つ沖仲仕たちを宥めつつ、猛、菅原、寺島、高宮の4人は、罠が仕掛けられているのを承知で、玲子を救うべく敵地に乗り込むのですが・・・。

 

新東宝は、吉田輝雄、菅原文太、寺島達夫、高宮敬二を大々的に売り出すため、4人を“ハンサム・タワーズ”と名付けていました。この映画では、登場人物の名字がそのまま俳優の名前になっていて、これも売り込みの一環だったのでしょう。4人の共演映画は本作の他にも「大学のご令嬢」がありますが、そちらは顔見せ程度らしく、実質的な揃い踏みはこの映画のみとの事。その意味では貴重な作品と言えます。

 

この映画における主役は吉田輝雄で、その次に高宮敬二が場を攫っている感じの作りをしています。この二人が専らアクション担当で、文太兄は終盤でようやくアクションを披露するものの、吉田のサポートに徹しています。寺島達夫は役柄上、影が薄くなっているのは、やや気の毒。

 

4人の中では高宮が一番おいしい役で、敵側につきながら憎めない男を演じていて、日活無国籍アクション映画における宍戸錠の立ち位置に似ています。また、彼の登場シーンがギターを持って現れるので、小林旭の「渡り鳥シリーズ」を連想させるなど、日活無国籍アクション映画の手法を上手く活用しているように思います。他にも、終盤にハンサム・タワーズが横並びに敵地に向かうショットは、後のサム・ペキンパーの「ワイルド・バンチ」を彷彿とさせます。

 

善人役の多い細川俊夫が、腹黒い親玉に扮しているのも珍しく、吉田とのタイマンでの殴り合いのシーンまであり、しかもボクシング選手の設定の吉田と互角の勝負をするのですから、好きものには堪りません。また、万里昌代の目力の強さは相変わらずで、昔の男に未練がありながら、ボスに逆らえない情婦の薄幸さも巧く醸し出していました。エリア・カザンの「波止場」を思わせる対立構造を含め、他作品を貪欲に取り入れながら、面白い映画を撮ろうとする姿勢が見受けられ、当時のプログラムピクチャーの勢いを感じさせる作品でした。