2月に入り,新しい本が出版されました。

タイトルは「がんと共存 ちょっと癒される話」。1,400円+E,さくら舎

2018年に出会った患者さんで,さまざまなことを教えてくださる事例をだけを集めて紹介したものです。

12冊と今回の本がペアになって,さまざまな事例を集めた書籍になっています。

 

ひとつだけご紹介しますね。下原稿ですので,もう少し読みやすい文章になっています。

 

誰のための手術?

 その女性の患者さんは,44歳。子どもさんがいないこともあり,超忙しい会社に勤務していました。しかし,検診で肺がんの疑いが出て,A病院を受診しました。

 A病院での精査の結果,こんなことをいわれたそうです。

「肺がんですが,そのまま様子を見て,6ヵ月後にロボットが入るので,それからロボット手術をしましょう」

 肺がんなのに,そんなに待って,手術を遅くしてもいいのだろうか? そう思ったYさんは,セカンドオピニオンを求めて,B大学病院を受診しました。

 すると,そこでは「いまの教授が退官する前に手術をしましょう」といわれたそうです。

 もともと,ネガティブ思考をしがちなYさんは,不安を緩和するために私のクリニックを受診してくださいました。

 Yさんから,それまでの話を聞いて,私はいいました。

「A病院ではロボット購入を前に,予定手術を集めている最中のようですね。そこまで待ってもいい,という理由にあなたは納得していないのに,患者の気持ちには寄り添ってないですね」

 さらに,こういいました。

「B大学病院では,間もなく教授が退官するので,教授の執刀記録数を伸ばすような目的で,すぐにでも手術したがっているような気がしますね。どちらも,病院側の事情だけでいっているような気がします。病院の事情で治療を受けてはいけないんですよ」

 結論的には,私が信頼している医師のいる「C病院を受診しましょう!」と,紹介状を書いてさしあげました。

 その後,Yさんはご主人といっしょにC病院を受診しました。そして私の信頼している医師の診察を受けることができました。

 医師はこういいました。

「これは大きくなる肺がんではありません。6ヵ月後に大きくなっていたら手術をしましょう」

 またも,ネガティブ思考系のYさんは,「そんなに待っていてもいいのだろうか」と,私の外来に毎週来て話します。

「あの先生がいっているのだから,大丈夫です」

 私は,再三説明しましたが,彼女の不安は消えません。

 最後に,私から妥協案を出しました。

「では,病院に連絡して,その先生の受診日を来週にでも変更してもらってください。そして,こういうんです。『保坂先生からも言われましたが,3ヵ月後に,検査していただくわけにはいきませんか?』と。」

 彼女は翌週,その先生の診察後に,クリニックに寄ってくださいました。そしてうれしそうに「3ヵ月後に検査してくれることになりました!」とだけいって,帰って行きました。

 

<現時点でのYさん>その後,一年半が経過しました。Yさんは激務の仕事には戻れそうもないので,休職し,傷病手当金をもらいながら定期的(ほぼ3ヶ月毎)にC病院でCT検査を繰り返していますが,2つあった肺の陰影のうち「,ひとつは消えてしまったそうです。もう一つは同じ大きさで残っているので,昔の炎症が治癒したものだろうという結論になったそうです。Yさんにとっての最大の関心事は,今後退職した場合の「生き方」です。毎月いらっしゃる彼女は,別人のように明るい女性になっています。