なぜ、幼稚園の先生は「子どもの発達の遅れ」を母に伝えないのか




幼稚園に通う子どもの発達について、「先生は本当は気づいていたのではないか」「もっと早く教えてくれていたら相談できたのに」と感じる保護者の方は少なくありません。


言葉の遅れ、集団行動の苦手さ、友達との関わりにくさ、こだわりの強さ、切り替えの難しさ、制作や運動への参加のしにくさなど、後から振り返ると気になる姿があったのに、幼稚園では「大丈夫ですよ」「もう少し様子を見ましょう」と言われ続けたという声もあります。


では、なぜ幼稚園の先生は「子どもの発達の遅れ」を母に伝えないことがあるのでしょうか。




まず大きな理由は、幼稚園の先生が診断をする立場ではないからです。


先生は集団生活の中で子どもの様子をよく見ていますが、「発達障害です」「発達が遅れています」と断定することはできません。


発達には個人差があり、特に幼児期は数か月で大きく伸びることもあります。


そのため、先生自身が気になる姿を感じていても、すぐに強い言葉で保護者に伝えるのではなく、園内で共有しながら慎重に見守ることがあります。




また、保護者を傷つけたくないという思いから、言葉を選びすぎてしまう場合もあります。


子どもの発達について伝えることは、とても繊細です。


「遅れがあります」と言われた保護者が大きなショックを受けたり、園への不信感を持ったりすることもあります。


そのため、先生は「少しマイペースですね」「集団の中では声かけがあると動きやすいです」「お友達との関わりはこれからですね」とやわらかく伝えることがあります。


しかし、その表現が遠回しすぎると、保護者には発達相談が必要なサインとして伝わらないことがあります。




幼稚園では、子どもが集団の流れに合わせる場面が多くあります。


朝の会、制作、運動、給食、自由遊び、帰りの支度など、決まった活動の中で、子どもの得意・不得意が見えやすくなります。


一方で、先生の支援や友達の動きを見て、何とか合わせている子もいます。


家庭では癇癪やこだわりが強くても、園では頑張って過ごしているため、困りごとが目立ちにくい子もいます。


反対に、園では困っていても、家庭では落ち着いている子もいます。


場所によって姿が違うため、判断が難しいこともあるのです。




さらに、幼稚園の先生は「今伝えるべきか」「もう少し成長を待つべきか」で迷うことがあります。


年少ではできなかったことが年中で急に伸びることもありますし、言葉や社会性、身辺自立には個人差があります。


ただし、この「様子見」が長くなりすぎると、必要な支援につながるタイミングが遅れてしまうことがあります。


保護者が不安を感じているなら、園からの指摘を待つだけでなく、自分から相談してよいのです。




相談するときは、「発達が遅れていますか」と聞くよりも、「園では集団指示に入れていますか」「友達との関わりはどうですか」「制作や運動に参加できていますか」「発達相談につなげた方がよいと思いますか」と、具体的に聞くと話が進みやすくなります。


家庭での困りごとも、「切り替えに30分かかる」「音に敏感で泣く」「一方的に話して会話になりにくい」など、場面で伝えることが大切です。




幼稚園の先生が発達の遅れを伝えないのは、気づいていないからとは限りません。


断定できない立場、保護者への配慮、発達の個人差、園と家庭での姿の違いなど、さまざまな理由があります。


けれども、親の不安は大切なサインです。心配なときは、幼稚園、保健センター、発達相談、児童発達支援センター、小児科などに早めに相談してよいのです。


早く相談することは、子どもにレッテルを貼ることではなく、その子に合った関わり方を知り、親も先生も安心して支えるための第一歩です。




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車重徳

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