ホスピタリズム（hospitalism）とは…
ホスピタリズム（hospitalism）は、
長期間にわたって
施設や病院などの環境に
置かれた子どもたちに見られる、
情緒的および
身体的な発達の遅れや
異常を指します。
この概念は、
特に施設での養育や
長期入院による影響を
研究する際に用いられます。
ホスピタリズムは、
感情の平坦化、
無表情、
社会的な接触を避ける行動などの
症状を引き起こすことがあります。
ホスピタリズムの原因
ホスピタリズムの主な原因は、
感情的および
物理的な環境の欠如
によるものです。
具体的には、
以下の要因が影響しています。
①愛着形成の欠如
具体例
乳児院や孤児院にいる赤ちゃんが、
十分な身体的接触や愛情を
受ける機会が少ない場合、
愛着形成が困難になります。
親や養育者との
安定した愛着関係が欠如すると、
情緒的な発達が遅れ、
無表情や感情の平坦化が見られます。
②感覚刺激の不足
具体例
病院のベッドに
長期間寝ている子どもが、
周囲の環境からの
感覚刺激が不足することにより、
感覚統合の発達が遅れます。
視覚、聴覚、触覚などの
刺激が不足すると、
脳の発達が遅れ、
結果として情緒的な反応が
乏しくなることがあります。
③社会的相互作用の欠如
具体例
施設で生活する子どもが、
同年代の子どもや大人と
十分な社会的相互作用を持たない場合、
社会的スキルが発達しにくくなります。
他者との交流が少ないと、
感情を表現する機会が減り、
無表情や孤立感が強まります。
④一貫性の欠如
具体例
頻繁に施設の職員が変わる環境では、
子どもが安定した関係を
築くことが難しくなります。
愛情深い一貫した養育者がいないと、
子どもは情緒的に不安定になり、
無表情や情緒的な平坦化が進行します。
《WISC-Ⅴ検査の低い指標の伸ばし方を知りたい方はコチラをクリック》
ホスピタリズムの影響
ホスピタリズムが子どもに与える影響は、
情緒的、身体的、
社会的な発達の各側面にわたります。
情緒的影響
具体例
長期間入院している子どもが、
感情を表現する機会が減少し、
無表情になることがあります。
また、愛着形成がうまくいかない場合、
情緒的な絆を感じることが難しくなり、
不安や抑うつの症状が現れやすくなります。
身体的影響
具体例
感覚刺激の不足により、
身体的な発達が遅れることがあります。
例えば、長期間寝たきりの
状態にある子どもは、
運動能力や筋肉の発達が
遅れる可能性があります。
社会的影響
具体例
社会的な相互作用が
欠如している環境では、
他者とのコミュニケーション能力が
発達しにくくなります。
結果として、社会的なスキルが欠如し、
集団生活や学校生活において
困難を抱えることがあります。
ホスピタリズムの改善策
ホスピタリズムを防ぐためには、
感情的および身体的なケアが重要です。
以下に具体的な改善策を紹介します。
①愛情豊かなケアの提供
具体例
施設や病院でのケアを担当する職員が、
子どもに対して
一貫して愛情深いケアを
提供することが重要です。
抱きしめたり、
声をかけたりすることで、
子どもが安心感を持ち、
愛着形成が促進されます。
②感覚刺激の提供
具体例
視覚、聴覚、触覚などの
感覚刺激を豊富に提供することが重要です。
例えば、色とりどりの玩具や音楽、
触感の異なる物体を使用して、
子どもが多様な感覚体験を得られるようにします。
③社会的相互作用の促進
具体例
同年代の子どもや大人との
交流の機会を増やすことが必要です。
例えば、グループでの遊びや
活動を通じて、
社会的なスキルを育むことができます。
④一貫したケア提供者の確保
具体例
可能な限り同じ職員が
長期間にわたってケアを提供することで、
子どもが安定した
愛着関係を築けるようにします。
一貫した養育者との関係は、
情緒的な安定に寄与します。
《WISC検査の所見作成について学びたい方はコチラをクリック》
ホスピタリズムについてのまとめ
ホスピタリズムは、
施設や病院に
長期間滞在する子どもたちに見られる
情緒的および身体的な
発達の遅れや異常を指します。
これには、愛着形成の欠如、
感覚刺激の不足、
社会的相互作用の欠如、
一貫性の欠如などが
原因として挙げられます。
これらの問題を防ぐためには、
愛情豊かなケア、
豊富な感覚刺激、
社会的相互作用の促進、
一貫したケア提供者の
確保が重要です。
これらの対策を通じて、
子どもたちの情緒的および
身体的な発達を支援し、
健全な成長を促進することができます。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
発達障害ラボ
車 重徳
