The Tempest 42 野蛮人かインディアンか  2017 09 29 (Fri) 訳 松岡和子 ちくま文庫
 
 こんどは、ステファーノとキャリバンのやり取り。
 
 酔っぱらいのステファーノの言葉に引っかかってしまう。
 三人(松岡、小田島、福田)の訳を比較したり、意味をネットで調べていたら、 ネットに
 Stephano speaks nonsense because he is drunk. とある。深入りしない方がよいのかもしれない。 
 

CALIBAN:  Do not torment me: Oh!       キャリバン: いじめないでくれ、ああ! 
STEPHANO:  What's the matter? Have we devils here? Do you put  tricks upon's with savages and men of Ind, ha? I  have not scaped drowning to be afeard now of your  four legs; for it hath been said, As proper a man as  ever went on four legs cannot make him give ground;  and it shall be said so again while Stephano  breathes at's nostrils.       ステエファーノ: 何だ、こりゃ? ここに悪魔がいるのでしょうか? 野蛮人やインディアンを引っ張り出して  俺をたぶらかそうって腹か、え? 俺が土左衛門にならなくて済んだのは、お前見てえな四本脚を怖がるためじゃねえ。  俗に言うだろう、「いかに立派な人間であれ、しょせんは四本脚、そいつから逃れるとあっては男がすたる」ってな。この  言葉は生きているぞ、このステファノー様が鼻で息をしているあいだはな。  
CALIBAN: The spirit torments me; Oh!       キャリバン: 妖精がいじめるよお、おお! 


 
 
 I have not scaped drowning to be afeard now of your four legs
 
 俺が土左衛門にならなくて済んだのは、お前見てえな四本脚を怖がるためじゃねえ。(松岡)
 おれが溺れねえで助かったのは、おめえのような四本足をこわがるためじゃねえやい。(小田島)
 俺様が溺れずに済んだのは、今更貴様の四本脚を見て震え上がるためではないぞ。(福田)
 
 次のせりふは、modern text では、次のようになっている。
 I’ll never run away from any ordinary man who walks on four legs like the rest of us.
 なお、別の解説では、 Stephano speaks nonsense because he is drunk. とあるので、気にしなくてもよいのかもしれない。 
 
 
 for it hath been said, As proper a man as  ever went on four legs cannot make him give ground;  and it shall be said so again while Stephano  breathes at's nostrils.
 
 俗に言うだろう、「いかに立派な人間であれ、しょせんは四本脚、そいつから逃れるとあっては男がすたる」ってな。この  言葉は生きているぞ、このステファノー様が鼻で息をしているあいだはな。(松岡)
 おれはこれでも、どんなりっぱな四本足の人間にも負けない男、って言われてきたんだ。このことばはいまだって生きて らあ、このステファーノ様が鼻で息をしている限りはな。(小田島)
 諺にあるじゃないか、高が四本脚の人間に負けるは男に非ずとな、この諺はすたれないね、ステファーノ様が鼻で 息をしている間は。(福田)
 
 give ground = 立場を譲る。後退する。退却する。屈する。議論に負ける。
 
 
 ところで、ステファーノも、悪魔か?野蛮人やインディアンか、といっている。前回は、トリンキュローも死んだインディアンを インヅランドに持ち帰って見世物にすれば、ぜにが稼げるといていた。当時は、インディアンが野蛮人扱いされていたのだ!
 ちなみに「テンペスト」の初演は1611年11月1日。 当時の日本は、江戸時代(1603年 ~ 1868年)。