The Tempest 27 クラリベル、チュニスで結婚式  2017 09 14 (Thu) 訳 松岡和子 ちくま文庫
 
 このアロンゾー(ナポリ王)たちは、アロンゾーの娘クラリベルの、チュニスでの結婚式の帰りに「あらし」に遭った ことが、一行の会話の中で明らかにされる。
 セバスチャン(アロンゾーの弟)は、ファーディアンド(ナポリ王の息子)があらしで溺死し、アロンゾーの娘がナポリ とは遠いアフリカで結婚したとなると、次期ナポリ王位をねらう? アントニーオ(プロスペロの弟)がミラノ公国を狙ったように? 
 
 

GONZALO:  That our garments, being, as they were, drenched in  the sea, hold notwithstanding their freshness and  glosses, being rather new-dyed than stained with  salt water.       ゴンザーロー: 私どもの衣服、海にどっぷり浸かったにもかかわらず、真新しい艶を保ち、海水で汚れるどころか まるで 染め直したようです。  
ANTONIO: If but one of his pockets could speak, would it not say he lies?       アントーニオ: だがあいつのポケットが口をきけば、今のは嘘だというんじゃないか? 
SEBASTIAN: Ay, or very falsely pocket up his report       セバスチャン: うん、さもなきゃシラを切ってポケットしてる。 
GONZALO:  Methinks our garments are now as fresh as when we  put them on first in Afric, at the marriage of  the king's fair daughter Claribel to the King of Tunis.       ゴンザーロー: 私どもの服は新品同然、姫君クラリベル様とチュニス王との御婚礼の際、はじめてアフリカで身に着けた そのままです。 
SEBASTIAN:  'Twas a sweet marriage, and we prosper well in our return.       セバスチャン: 結構な婚礼だったな、おかげで帰りは万々歳。 
ADRIAN:  Tunis was never graced before with such a paragon to  their queen.       エイドリアン: チュニスがあれほど美女を王妃に戴いたためしはございません。 
GONZALO: Not since widow Dido's time.       ゴンザーロー: 夫に先立たれたディードー以来のこと。
ANTONIO: Widow! a pox o' that! How came that widow in? widow Dido!       アントーニオ: 先立たれた? 縁起でもない、こんな時に未亡人を持ち出すな! 夫に先立たれたディードーだと! 
SEBASTIAN: What if he had said 'widower AEneas' too? Good Lord, how you take it!       セバスチャン: ついでにやつが「やもめのイーニーアス」といったらどうなる? そんなことにいちいち突っかかるな。 
ADRIAN:  'Widow Dido' said you? you make me study of that:      she was of Carthage, not of Tunis.       エイドリアン: ディードーとおっしゃいましたね? 考えてみれば、ディードーが王女だったのはカルタゴ、チュニス ではありません。 


 
 paragon = 典型、模範、ダイヤ。
 widower = 男やもめ。
 
◇◇◇ 
 The Tempest 「あらし」はこれまでに数回読んだり、見たりしたはずなのに、このあたりの会話は全く記憶にない。
 セバスチャンの陰謀も、覚えていない。
 アロンゾーの娘の結婚式の帰りに地中海で遭難したこと、「海水に浸かりあんな嵐にあったのに服が汚れていない」 というところは覚えている。キャリバン、エアリエルのことはよく覚えている。
 
 「あらし」とは関係ないが、なにごとも最近は加速度的にわたしの記憶が消えている。でも、消えてほしい記憶が消えない。