藤川はKと話して思った。

人間は能力の差があるのは当然ですし、仕方のないことです。

しかし大事なことは人は負けた事は素直に認めた上で、負けたことに負けないことだと思う。


しかしKはすべて周りや環境のせいにしていた。

そこに人間の成長はないことを分かっていなかった。


厳しい言い方だがKの存在が店全体の雰囲気を悪くしてしまったことは事実だった。

それも店長という立場であったら尚更の事。


部下からイジメに遭った藤川でさえ自分のせいだと思っていたぐらいだ。


藤川の様々な苦労をした話しを聞いたK

ニコっとして、

「店長も苦労しているんですね。根性ありますね。」

と、言ったのだ。

そして少しずつ心を開いてくれたように感じた。


藤川は

『サラリーマンにとって一番大切なのは、自分自身の成長と出世を考えることです。』

と、割り切った言い方をした。


そして、藤川の考えと想いを話した。

『会社のルールに関係なく店長代理として、新たな気持ちで頑張って欲しい。

みんなに、Kさんの実力を見せつけてやってください!』

と。


藤川はKの資料を見て販売の実力は十分に理解していた。

更に、

『松戸店の売上を伸ばすためには、Kさんが必要なんだ』

と、訴えたのだ。



藤川自身、まだマネージメント能力が十分でないと思っていたので、元店長のKを重用することが本人の成長のためにも藤川のためにも良い案だと考えたのです。


藤川の話をいろいろ聞いていたKは急に元気になったような感じだった。

そしてK自身も、もう一度ゼロから全力でやり直そうと決意してくれたのです。


その日の閉店後、藤川の考えと想いを伝えるために、全体ミーティングを開いた。


売上を伸ばすために会社の命令で来た藤川は、少し形を変えて話した。

『会社の期待に応えるためにも、自分の成長・出世するためにも全力を尽くしたい。

みんなは、自分の出世のことだけを考えて、また明日から新しい気持ちで是非とも頑張ってほしい』


更にKの今までの想いも話した。

『もう一度リセットしてゼロから頑張りたいと決意してくれました。そこで新たに二人が転勤して来たと思って、仲良くして欲しい。』

と、話し心からみんなにお願いした。


販売員の中には、何人かウルっとしていた。

みんなも仲良く一緒に頑張りたいとの想いがあったのです。


藤川は良い店だなぁと思った、そして

〝よしっ、いい流れだ!と、心の中でガッツポーズをした。


全ての販売員と心が通じ合った瞬間のようだった。

そして松戸店の快進撃が始まる。