藤川は問題の張本人だったKと腹を割って長時間じっくりと話した。
問題解決するまである程度の日にちがかかるだろうなぁと思っていましたが、Kの想いを理解してあげながらも厳しく指摘した事がかえって納得理解してくれたようだった。
無事に問題は解決したのでした。
仙台店のイジメ問題とは違い、一人だけの問題だったこともあり思いのほか解決が早かった。
店の雰囲気はちょっとしたぎこちなさはありましたが、みんなとも仲良くなり売上も上昇していったのです。
雨降って地固まるという感じになりました。
藤川は次の問題である販売力の弱い販売員の底上げをしていく事を始めた。
合宿してまでする事ではなかったので、朝と夜に時間を作り藤川は三人の販売員と計四人でロールプレイングを行なった。
週二度以上のペースで1カ月続けみんなの努力と前向きな姿勢には、頭が下がる思いでした。
そして三人の販売員は目を疑うくらいに成長して、今まで出来なかったスーツなどの高額商品の販売も上手く出来るようになったのです。
この時ちょうど駅ビルのバーゲンが始まりスーツなどを販売する人が一人でも多く必要になったので、彼らの成長は大変に助かったのです。
このバーゲンは店内はもとより、別会場でも大々的に開催していて販売員が足りない状況だった。
店は目玉商品をたくさん集めその催事場に出品していて期待をして力を入れていた。
このバーゲンは客数も普段の1.5倍もあり、大盛況だった。
毎日人が足りない状態で、休みも取れないぐらいで嬉しい悲鳴を上げていた。
そして売上目標を大きく上回り、店のムードは最高で販売員もみんなイキイキとしていた。
あのKもフル回転で動いてくれて、今まで何もなかったような雰囲気になり店一丸となっていた。
やはり同じ仕事をやるにも、またどんなに忙しくても気分よく働けることは最高です。
身体の疲れなどなんとも苦にならないが、人間は精神的な苦労の方が本当に応えると痛感しました。
そんなバーゲン中のある日、仙台店の若田さんが本社へ来た帰りに松戸店に藤川を訪ねて来てくれました。
藤川は忙しかったのですが、わざわざ会いに来てくれたことを心から喜んだ。
若田さんは忙しい藤川を見て、
「相変わらずバリバリですね」
と彼一流の言い方をしたのですが、何故か少し感傷的な顔をしていた。
しかし藤川はすべて分かっていた。
年どうこうではなく若田さんは藤川を本当に心から慕ってくれていたのです。
そんな仲で久々に会え顔を見たからであった。
藤川は
『松戸店に転勤命令でも出たんですか?』
と聞くと若田さんは満面の笑みをして
「いや、真面目にやっているか見て来るように営業本部長に頼まれたので来ました」
と藤川譲りのギャグを言ってきた。
二人は大笑い。
腕上げたねぇと笑いながら若田さんに藤川は言った。
お茶を飲みに行きたかったのですが、忙しくて外出できなかったので立ち話で終わってしまった。
仙台店の状況などを話し若田さんは帰って行った。
次回はゆっくり来てもらう約束をした。
バーゲン中と夕方だったのでお茶も出来ず、本当に申し訳ないと思いつつ藤川も少し寂しい気分になってしまった。
店長に就任して初めての右腕でもあったので藤川もゆっくりしたかったのです。
そして若田さんが何か話したかった様子を感じていたので、藤川は翌日仙台店に電話をしたのです。
すると・・・