今日は小学四年の自分から二十数年経ったバレンタインデーの日の出来事で、今でも思い出す爽やかな話しを。

時はバブル成長期の真っ只中。

それは、とても印象深く残っていて大変感動したエピソードでした。


真の人間性や人に対して、

気遣い・思いやりなどの大切さを、考えさせられた原点のひとつになっています。



藤川譲二が、

銀座で毎月1,000万くらい飲んでいた時代。

天国にいたような時期のあるのエピソードです。

その日、銀座のクラブではバレンタインデーを話題にして、チョコレートを沢山もらいながら楽しく飲んでいました。

藤川が3件目に行った超がつく高級店は錚々たる面々が来店するお店です。

事件⁉︎はその店で起きました。


そこかしこのテーブルでワインやシャンパンを飲んでいるほど賑わっていました。

藤川は負けじと、

一本100万円以上するロマネコンティをバレンタインデーと言うこともあり注文して仲間達とカッコを付けて飲みました。

(と、言っても月12回はロマネコンティデーと勝手に銘打って飲んでいましたが^_^)



少し離れた席で、

誰が見ても近寄り難い大物風の方が数人の人達と飲んでいました。

店の人の気遣い方はかなりのもので、はたから見ていても、もの凄い丁寧な接客ぶりでした。

銀座のクラブは僕達若い人間にも非常に丁寧に接客してくれますが、その方は段違いでした。


たまにその方が藤川達を見て、

なんでこんな若いお兄ちゃんがいるんだ的に見ていました。

更に、ロマネコンティに目を向け、

(負けたぁ)

と、いう感じでした。

銀座はそういうところが面白いのです。

それでも、その方はニコっとしてくれていました。

話し声も少し聞こえるぐらいの距離だったので、楽しい雰囲気を保っていたのです。



そんな矢先、事件は起きた。

みんな楽しい雰囲気で飲んでいたその時、

〝ガチャーン〟

と、店内に響き渡る音がしたのです。

藤川は嫌でも見える席にいたこともあり、丁度そっちを見ていた時です。


黒服の人がバランスを崩して、その大物風の方の右足もとに運悪く、運んでいた飲み物をこぼしてしまったのです。


みんなビックリ!

次の瞬間、店の人達がその席に飛んでいきました。

お客も一斉に、その席に目を向けました。


飛んで行ったのはママと数人の女性、そして店長と数人の黒服の人達です。

その大物風のそばに居た取り巻き的な人達は全員が立ち、こぼしてしまった黒服へ凄い形相で睨み文句を言っていました。

ママ達は、これ以上ないと言う慌てぶりです。

遠くから飛んでいった店の人を見て、

藤川は

(そんな人数いらないでしょ)

と、思うほどでした。


また全員がおしぼりとタオルを持って来ました。

わずか34分の出来事です。

みんな、

「すみません、すみません」

の、連呼です。

当事者の黒服はこの世の終わりのような状態でした。

店長、ママは平謝り状態。

藤川も、

(これはヤバイ!)

どうなるのかなぁと少しドキドキ、ハラハラして見ていた。

そばにいた女の子も店の人間として、違う席なのに心配顔をして焦っていました。


今思い出しても、ドキドキするような出来事でした。



そして、いよいよ。

その大物風の方が少しムッとしながらも、自分の靴やスラックスを拭いていた黒服に向かって言ったのです。

「お兄さん、右足だけだと不公平だから左足にもこぼしてくれるかい」

と、声をかけたのです。


一瞬、周りの人達は、はぁ~っという状態でしたが、ママは感心しながら

「さすが、飲み上手!」

と、言いながら、大笑いしたのです。

それから、その席は大盛り上がり。

その黒服も、顔面蒼白だった顔も少し戻った感じでした。



銀座で飲んでいると、残念ながら大物風で偉そうな人ほど、横柄で小さなミスにも文句を言っている姿を見ることがたまにあります。

藤川は、銀座・六本木で長く飲んでいて、そういう場面を見て引いてしまう事が何度かありました。


この事の顛末を見ていて、その大物風の方が言った黒服の人への気遣いの言葉、そして周りの状況への対処は最高でした。



あの状況、あの雰囲気の中に居ないと理解をするのは難しいかと思いますが・・・。

藤川はあれから時間が経っても、思い出す度に感動が増してきます。

社会の中で、本当の人間性や気遣いを教えてもらった気がしたほどです。

また、あの場を和ませたユーモア(今でいう神対応)を瞬時にできる人は中々いないと思います。



藤川はバレンタインでもらった60個ほどのチョコレートを、感動したことで嬉しい気分になり帰り道に運転手と二人で上野のブルーシートの人達に配って回ってしまいました。


極貧の頃、嫌と言うほど人からいろいろと物を貰っていたので、何かあると恩返しとして日常茶飯事のことでした。


あの清々しいバレンタインデーの日の事は、家に帰って女房からのチョコレートもなく、ひとつぐらい残しておけば良かったと悔しかったことは一生忘れません。



明日からは、またそんな将来があるとは夢にも思っていない貧乏時代に戻ります。

物凄いショッキングな出来事の話しから・・・