最多合法手局面

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左図は、合法手が最多となる局面で、593の指手が存在する。
時々、この局面が引用されて「(このようにチェスと比べれば合法手が多いから)将棋は難しい」と結び付けられることがあるが、実際には頭金一発で終わる局面を示されても、あまり意味がない気はする。いや、はっきり、これをもって「将棋は難しい」という根拠にはならない、と言い切ってよさそうだ。
この局面について詰筋を調べてみると、次のようになった。
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・▲1三金の 1 手詰
・▲1三銀打の 1 手詰
・▲2三銀打の 1 手詰
・▲2三金の 1 手詰
・▲2一飛成の 1 手詰
・▲1一飛成の 1 手詰
(以下余詰)
×▲2四桂以下の 3 手詰
×▲1一飛打以下の 3 手詰
×▲1三飛以下の 3 手詰
×▲3四角以下の 3 手詰
×▲1四飛以下の 3 手詰
×▲1三歩以下の 3 手詰
×▲1三香以下の 3 手詰
×▲1四香以下の 3 手詰
×▲1一金以下の 5 手詰
×▲2一角以下の 5 手詰
×▲2三角以下の 5 手詰
×▲2一銀打以下の 5 手詰
×▲1三銀成以下の 5 手詰
×▲1三銀不成以下の 5 手詰
×▲2三銀成以下の 5 手詰
×▲2三銀不成以下の 5 手詰
×▲1一銀成以下の 5 手詰
×▲2一銀直不成以下の 5 手詰
×▲2一銀左不成以下の 7 手詰
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将棋はチェスと比べれば、平均分岐数が多いし、終局までの平均手数も長い。そういう意味では将棋は難しいのだが、単純に最大可能手数の局面を持ってこられても、これは「1手しかない」局面と考えることが出来る。しかも簡単な1手詰が存在する局面の上に余詰だらけだ。これが詰将棋の世界の評価なら、作品として価値はゼロである。
探索の難易度は、可能(分岐)手数ではなく、局面の(真の)結論を得るコストに関係する。この局面の真の結論は「勝ち」であり、例えば「▲13金」の1手先を読んだ時点(正確には2手先の手がないことが判った時点)で結論を得ることができ、探索は終端する。将棋のルールしか知らない人間に説明したいのであれば将棋の難しさを理解してもらう判り易い例かもしれないが、593手全てについて探索する必要がない局面であることを考えれば、「簡単な終盤局面」と言える。
将棋の難しさは、もっと別のところにある。典型的には終盤逆転が多いゲームであることがよく言われるが、序盤の難しさには到底及ばない。ある局面は、そこへ至る前の局面より結論に近い。ここでいう結論とは最終的な「勝負の結果」のことを意味するが、局面が進むについてそれが見えやすくなってくるのであって、序盤ではそれが全く見えないからだ。
実戦的に到達し得ない(その局面に達する前に終わっている)局面には、何の意味もない。この局面は「参考程度」と考えた方がよさそうだ。