運命の徒然日記 - 鈴木治男

運命の徒然日記 - 鈴木治男

I have a big dream.And I have not given up that dream now. For that I will not spare any effort. My life is to become the best in the world, Japan.

I believe that the difference in ability is small,the difference in effort is great. I never give up !
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  みなさんには良いにつけ悪いにつけ『あの時こうだったら』とか『あの時こうしていたら』というような後悔の念に苛まれたことはないでしようか?
  この『運命の出会い』は、人間の生きていく中のありがちな一つの偶然的出会いが幸せを呼び寄せ、そして、『あの時こうだったら』『あの時こうしていたら』ということによって、ある必然的な終焉を迎える実話を書き綴っていくものです。小説ではありません。
  登場人物は全員仮名ではありますが、実在の人物です。そのほか、日時や場所、日々起こったことは紛れもない実話です。ただ、会話部分についてのあやふやさは否めませんが、当時の日記を基に忠実に近い状況に再現しています。

 

 

運命の出会いNO.017
 
「‥‥‥あの人が  やさしい歌  うたってくれる‥‥‥」
歌い終わった美由紀は、恥ずかしそうに下を向いて、
「‥‥‥ハルさんと私だけの秘密だからね‥‥‥」
と一言。その時の美由紀も可愛かった、本当に可愛かった。
「ありがとう、美由紀‥‥‥」
正直、なんと言えばいいのかわからなかった。
なぜか不思議な複雑な感じだった。なぜ急に歌い始めたのか?そして、拍手していいのか?いけないのか?歌、上手いねと言っていいのか?いけないのか?ただ、絶対に言ってはいけないのは「そっくりだね」という言葉だと思った。わかっちゃいるけど、浅田美代子さん本人のようだった。
 
 
「ハルさん、今度の水曜日、午後は会えないかもしれないの‥‥‥ごめんなさい‥‥‥」
会えないから歌ってくれたのかな?ととっさに思ったが、そうじゃなかったみたいだった。理由は未だにわからないままである。
「いいよ、気にすんなよ、美由紀」
「うん、ありがとう、ハルさん‥‥‥」
いつものように、門柱灯の灯りが美由紀の顔を暗闇にポッカリと浮かばせていた。
「じゃぁまた明日」
「うん、また明日ね、ハルさん」
美由紀は、俺が道を曲がって見えなくなるまで必ず見送ってくれた。そして、曲がり際に必ず手を振り合った、雨の日も風の日も雪の日も‥‥‥。
 
次の朝‥‥‥。美由紀といつものように恵比寿駅で会った。
「おはよう、美由紀」
「おはよう、ハルさん」
美由紀がいつもより明るく、そして、益々可愛らしかった。
「はい、お弁当‥‥‥」
「ありがとう、美由紀」
「あのね、ハルさん‥‥‥」
またいつものモジモジが始まった。言いたいことがあるなら早くいわないと、もう渋谷に着いちゃうぞ!と思った。
「‥‥‥水曜日の用事が今日になっちゃった‥‥‥ごめんなさい」
ちょっと寂しい気がしたけど、仕方ないと思った。
「大丈夫だよ、今日の午後会えなくたって、明日になればまたいつものように会えるんだから、そうだろ?」
その美由紀の言葉を聞いて俺が一言言ったら、もう渋谷に着いてしまった。
「また明日ね、ハルさん」
「うん、また明日な、美由紀」
俺たちの一日が始まったばかりなのに、別れの言葉を言うとは思わなかった。そして、いつも何も感じなかった駅の別れに、この時ほど寂しい気持ちにさせられたことはなかった。
 
その日一日、なんとなくモヤモヤした気分だった。美由紀の作ってくれたお弁当を食べる時などは、寂しさがこみ上げてきて涙が溢れ出てきそうだった。
授業が終わると、久しぶりに定期券通りのルートで帰宅した。
 
お母ちゃんは相変わらずテレビを視て、何がそんなに面白いのか、馬鹿笑いをしている。いい気なもんだ!
何もする気がしなくて、自分の部屋でゴロゴロしていると、電話の鳴る音が聞こえた。どうせ近所のオバサンかなんかだろうと思った。時間は午後4時を回っていた。しばらくすると、
「治男!美由紀さんから電話!早く出なさいよ!」
アホか!コラッ!早く出なさいよも何もあったもんじゃねぇだろが!たった今電話だって言ったばかりだろがっ!始末ワリィばばあだっ!
「今行くから待ってろよ!っるせぇなぁ~」
「なんだい!その口の効き方は!親に向かってなんだい!」
オイオイオイオイ!保留機能なんか無いんだから、あんたのその怒鳴り声、全部美由紀に聞こえちゃってんだぜぇ~、どうしてくれんだよっ!バカたれがっ!受話器を渡す時にもグツグツ言っていた。通話口くらいおさえろよ!
 
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口を曲げて獲物を狙う『鬼婆』
 
「もしもし、美由紀?」
俺が話し始めてんのに、まぁ~だグツグツ言っている。
「美由紀じゃなくて、美由紀さんだろ」
っるせぇババアだっ!美由紀の話は、今から少し会えないか?ということだった。なんだろ?と思ったが、美由紀と会えるんだから嬉しかったのは確かだった。
「わかった、俺が多摩川園前まで行くよ」
ということで、急遽美由紀と会うことになった。
電話を受けた時は、何かあったんじゃないかと思ったが、元気のいい声だったから安心はしていた。でも、なんでこんな時間に‥‥‥。家を出る時、お母ちゃんが言った、
「帰り遅くなんのかい?ご飯いらないね?」
オイオイオイオイ!遅くはなるかもしれないけど、端っからご飯いらないね?はねぇだろ~。面倒くさいから、
「あぁ、たぶん遅くなるから、ご飯はいらないよ、どっかで食べてくらぁ~」
そう俺が言うと、
「小遣い無いんだろ?持ってきな」
そう言って二千円くれた。ババア、いや、お母さんの背中に後光が差しているようだった。
 
俺は矢口渡まで走った。いつの間にか、美由紀に会える、今日は会えないと思っていたのに会える、その気持ちで頭がいっぱいになった。
俺は目蒲線に飛び乗った。多摩川園前駅までがすごく遠く感じた。途中の駅なんか通過しちまえ!と思った。
ようやく多摩川園前駅に着いて改札を出ると、美由紀はいなかった。おかしいな?と辺りを見回すと、美由紀のような美由紀じゃないような女性がニコニコしながら俺を見て立っている。気持ち悪かった。だから、
最初は美由紀じゃないと思った。
 
昭和52年まで『多摩川園前駅』だった
 
「ごめんなさい、こんな時間に‥‥‥」
このクリクリっとした目、どう見ても美由紀にしか見えない‥‥‥。
「‥‥‥美由紀だよなぁ?」
「何を言ってるの、もうぉ~、ハルさんの美由紀じゃない」
と笑いながら美由紀は言うけど、そう言われても別人のようだった。髪をバッサリ、セミロングの髪がショートになってる。
「ハルさん、ショートが好きだって言ってたから、ついさっきカットしてきたの、どうかなぁ、おかしくない?」
鳩が豆鉄砲を食ったようなとはこのことだった。当然、周りの風景なんか見えない。でも、何か言わなければならない。
「ぅうん、そんなことないよ、すごくいい」
やっと口から出た言葉がこれだった。
瞬きもしないで見入ってしまった。
「まだお母さんにも見せてないの、ハルさんに先ず見て欲しくて」
何と返事をしたらいいのかわからなかった。
「用事って、このことだったんだ」
この言葉が口から出るまでほんの数秒だったんだろうけど、それが数分に感じた。
「うん、ハルさんをびっくりさせちゃおと思って‥‥‥」
「最初、誰だかわからなかったよ」
「も~ぅ、ハルさんったら‥‥‥」
美由紀は益々可愛らしくなった。
それにしても、夢を見ているような思いだった。女性にとって髪は大切なものと聞いたことがある。その大切な髪をバッサリと‥‥‥。夢を見ているような思いというより、信じられないという思いだった。
「ハルさん、まだ時間は大丈夫かな?」
「うん、お母ちゃんには遅くなるからって言ってきたから」
「良かった」
 

「美由紀、ちょっと土手歩いてみないか?」
「うん、それからご飯にしよ」
「ぅうん?ご飯?」
「そうよ、私のお母さんが是非連れてきなさいって言ってた」
なんか話がよくわからない‥‥‥。
「どういうこと?お母さんにいつ話したんだよ?」
「さっきハルさんのお母さんに電話した後に‥‥‥すぐ、電話で‥‥‥」
アァ~、イライラするっ!益々話がわからなくなってきた!
「だってさ、俺、美由紀の家でご馳走になるなんて一言も言わなかったじゃん?いつの間にそういう話になったんだろ‥‥‥?」
「都合悪いの?」
「いや、そうじゃなくて、なんか話のツジツマが合わないからさ‥‥‥」
「そうかなぁ‥‥‥、私がハルさんのお母さんに『治男さんに夕食をご馳走してもいいですか?ごめんなさい、お母さん』って言ったら‥‥‥」
あのババア~そんなこと一言も俺に言わなかった!ふざけやがって、あのババア~!
「わかった、家のお母ちゃんが俺にそのことを言わなかったからだ」
美由紀は大笑いし始めた。
「で、美由紀がそう言ったら、お母ちゃんなんだって?」
「美由紀さん、よろしくお願いしますねって言ってた」
図々しいお母ちゃんだ。
実はそんなことはどうでもいいことなんで、二千円丸々俺のものになったわけだから、それでよかったのである。
 
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再び登場
 
「ハルさんのお母さん、江戸っ子って感じ」
「母ちゃんは横浜生まれの江戸っ子だよ」
美由紀は益々大笑いだった。
 
多摩川の河川敷には涼しい風が吹いていた。まだまだ子ども達も遊んでいる時間だった。
「なんか、首の周りがスースーする」
首筋を触りながら言った。改めて見ると、俺の髪より短いんじゃないかと思うくらい短かった。
「でも、美由紀、思い切ったよなぁ」
「そんなことないわよ、ハルさん好みにしただけだから‥‥‥」
髪が短くなった分『浅田美代子さん』から解放されるようにも思えた。そして、益々可愛らしくなって世界一だと俺は思った。
「明日学校に行ったら何か言われるんじゃない?」
「失恋したんじゃないかとか?」
「うん」
「大丈夫よぉハルさん、失恋なんかしてないし、その逆だもん」
全く後悔してないようだった。
「私、これからずっとこれだもん」
 

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