製剤学って大事なんです!!その② | 薬剤師の在宅医療奮闘記

薬剤師の在宅医療奮闘記

患者さんを助けるのは医師、看護師やケアマネージャーだけではありません。
薬物治療の担い手、薬剤師の活動を報告します。

日本在宅薬学会のメンバーに会って
活力みなぎる
あらいぐまです!!


今回は、日本在宅薬学会の若手会(笑)で
ちょっと議論になった製剤についてのお話です。

まず、アクセス数を稼ぐ為に

前回の製剤学記事のリンク→

割とメジャーなマクロゴール6000のお話でしたが、
今回も添加物にまつわるお話です。

マイナーなやつですよ。

マイナーとは言っても、
かなりの数の薬剤に使用されている添加物です。

そいつの名は・・・

結晶セルロース!

はいっ!!
この結晶セルロースは以下の特徴をもっています。

線維植物から得られたα‐セルロースを酸で
部分的に解重合して精製したもの。

白色の粉末状で、水に溶けない。

味はなく、化学的に不活性であることから
薬物と混合した場合にも変化がない。

また、打錠機で圧縮すると、
粒子が絡み合い容易に成型できる。

水分により容易に崩壊し、流動性が良い。

上記の特徴から錠剤の結合剤、崩壊剤として
優れた機能を発揮する。


いやぁ~
この説明を見た限りでは万能添加物ですね!!

しかし、
今回こやつの特徴が悪い方に作用してしまいました。


日本在宅薬学会若手会のメッセージグループに
一包化したセイブル錠の11包中8包が
さらっさらに崩壊した事例に出会いました!
との投稿が・・・。

写真を見た時の日本在宅薬学会若手会メンバーの意見
・なんかの下敷きなってない?
・時間経過考えても自然に崩壊とは考えにくい
・湿度高いって言っても部屋の中まで高いとは考えにくい
などなど
まぁ、そうなりますわな・・・

私も最初、
潰しちゃったんじゃないかなぁと思っていました。

しかし、
11包中の8包
意図的にそんなことしないだろうと思い、
セイブルの発売元、三和化学研究所に電話で質問

『すいません
 一包化したセイブルが袋の中で
 さらっさらに崩壊してたんですけど
 何か思いつく原因ありますか?』

お客様相談室の担当者は即答してくれました!

セイブルは湿気に弱い薬です。
これは原薬であるミグリトールが原因です。
また成型の為に使用している結晶セルロースも
水分を吸収することにより膨張し、
粒子の絡み合いが解ける原因と考えられます。

データとしては、
湿度80%以上(厳密には84%の条件下)で
崩壊するというものがあります。
ですので、添付文書に記載された保管方法で保管してください。


ふむふむ
これが答えじゃないですか!
そして即答するということはセイブルあるあるだったんだ!!
一発で分かって、良かった良かった。


みんな~
分かったよ!
湿気が原因だよっ!!

しか~し、
これで納得しきれないという意見も・・・。

部屋の湿度80%って超える?
超えてたとして、そんな部屋で生活できる??

いやぁ~
流石、若手会メンバー
簡単には終わらせてくれません(笑)

もう、こうなったらトコトン調べちゃる!

まず、この事例が起きた期間の気象情報を調べました。
一包化した日から11日間において
湿度が80%を超えた日が7日間
最も湿度の高かった日で95%、最高気温24度

おっ!
気象情報から見るに崩壊する条件そろってるじゃない

いや、待てよ
室内の湿度ではないな・・・。

患者宅の様子を確認しました。

『自宅の横が川でエアコンはなく、
 窓は開けっ放しです。』

ふむふむ
これは、ほぼ気象条件と同じ条件が
家の中でも起きていると考えていいのではなかろうか!?

『そんな湿度が高い部屋で生活は難しいのでは?』
この言葉が引っ掛かり
本当に生活出来る環境だったかを確認することに

ここで使う指標は不快指数

一番苛酷であったであろう
湿度95% 最高気温24度の条件での

不快指数 74.7

これは『暑い』と感じる程度

まぁ、ジトジトするかもですが
普通に生活出来るレベルでしょう
ちなみにエアコンをつけたくなるのは
不快指数77~80以上ぐらいだそうです。



いやぁ~
薬と関係ない知識も使うことになりましたが、
以上により、今回の事例は湿度が原因だと思います。

あくまでも個人的な推論ですが・・・。


今回は、
結晶セルロース、ミグリトール
ちゃんと薬の性質を知らないといけませんね!!




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