進学を目指して②
 目標ができたので、次は計画を立てることにしました。塾や予備校には頼らず合格するにはどうすれば良いか、例のごとくまずは情報収集から始めました。ネットに溢れている合格体験記や参考書のレビューを読み漁り、安く無駄なく確実に合格できるプランを立てました。この「ぼくのかんがえたさいきょうの勉強法」作りはそれとして楽しかったですし、授業や講義が嫌いな私には塾や予備校に通うより合っていたのかもしれません。

最初に計画を立てたのが功を奏し、成績は東大合格圏内に入りました。ですが、私の場合(そして多くの経済的に余裕のない学生もまた)問題は成績よりも「お金」と「精神」にありました。

 お金がないというのは、実際的にはもちろん精神的にも非常に悪い影響を及ぼします。例えば具体的に、私は高校の修学旅行には行っていません。これは、生活保護からは修学旅行費の支給がないため、行きたい場合バイトをしてその費用を稼がねばならず、私はそこまでして行く必要を感じなかったというだけのことで、自分では「行けなかった」のではなく「行かなかった」のだと解釈しているのですが、これは強がりに思われるかもしれません。まあ、それでも、同級生が修学旅行に行っている間にドラゴン桜を全巻読みきることができましたし、誰もいない教室で勉強するのは楽しかったので、今でも全く後悔はしていません。

ただ、これにより「勉強するために修学旅行をサボった変なやつ」というような形で悪目立ちしてしまい、ある意味で孤立し、自分の中でも周りの人間と自分は違うんだという思いがはっきりとしてきました。これは中学までとは異なる状況で、この孤独感、自分だけがという思いは時を経るごとに強くなっていきました。

最初のピークは高2の後半だったかなと思います。その頃は家計が特にきつい時期で、お金の回し方を間違えると月の終わり頃には食べるものも確保できないほどでした。

そんな時期のある日、まさしくその日は夕飯をどうするか途方に暮れていたような日だったのですが、休み時間に同級生が週末からディズニーランドに行く話をしておりました。私がその日食べるものにも困っているのに、この子たちは夢を見に行くのかと、普段はそんなこと少しくらいしか気にならないのに、その日はとてつもなくデカい憎悪の感情が湧いてきました。ですが、言うまでもなくその同級生に非はありません。彼らは、彼らに与えられた生を正当に消費しているだけなのです。しかし、この時すぐにはこのような結論に至れず、ただでさえ捻じ曲がっている私の精神をさらに歪めました。ただ、それでも私が学校生活を乗り切ることができたのは、当時の学友が不安定で危うい私を迫害せず交友を絶たずにいてくれたからで、私は私の前進が自らにのみに起因するのではないことを魂に焼き付けて生きねばなりません。

 より実際的で決定的な問題は受験から入学に際して生じます。受験するにあたってもっとも苦労したのはやはりお金の問題で、受験料はもちろん交通費やホテル代等かなりの額が必要になります。受験するからといって保護費が増えるわけではありませんから、元々ギリギリの家計からこれらの費用を捻出するのは中々の無理難題です。

私の場合もかなり無理を言って受験費用を出してもらい、前期も後期も東大、滑り止めなしの一本勝負となりました(これは半分意地でありました)。落ちたら死ぬ、それくらいの覚悟で挑んだ入試でしたが、問題を解き忘れるなど普段ではあり得ないミスを連発してしまい、全くもって納得のいくものではありませんでした。合格発表までの二週間は日増しに落ちた気しかしなくなっていき、ずっとどうやって死ぬかを考えておりましたが、努力の甲斐あって合格していました。こうして私は少しだけ生を延ばすこととなったのでした。

 大学進学を目指し、自分の「夢」を妥協せず追求した高校三年間は、本当にたくさんのことがありました。それらの多くは困難や障壁でしたが、私は運と周囲の助け、そして歪曲した精神を駆使しなんとか乗り越えることができました。しかし、もし私が経験したこれらのことが、経済的に恵まれない学生に当然かつ一般的に要求されるものであるとされているのなら、ちょっとキツ過ぎはしないかなと思います。

中高生の年齢で、自分の意志や考えを明確化するのは中々難しく、実際多くの学生はそれに至っていないように思われます。そしてそのような純粋さこそが彼らの魅力であるように感じるのですが、現状相対的貧困にある中高生がその魅力を損なわずに大学進学を目指し成し遂げるのはかなり難しいように感じます。多くの場合、彼らの前途を阻む多くの困難に為す術なく、それどころか無意識的に諦めるような形で、進学を断念することになるのではないかと思います。このような、進学を諦めざるを得ず、またなんとか成し遂げられたとしても精神的経済的な重荷を背負わなければならない現状は、なんとか改善したいのであります。