9. 「日本のマーケティングはステイタスが低い」、とコトラー教授
 「経営トップがマーケティングを認識していない!」

マーケティングの世界的権威、フィリップ・コトラー教授(米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院)は、日本のマーケティング事情について「理解が進んでいない、ステイタスが低い」、と極めて厳しく指摘しています。(日経7月28日)

コトラーはマーケティングを「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げる」と定義しています。(「戦略的マーケティング」ダイヤモンド社)

同教授には有名な「マーケティングに必要な4つのP」(4つのプロダクト=製品、プライス=価格、プレイス=流通、プロモーション=販売促進)があり、マーケティングの進化に大きく貢献したと言われています。

最近はソーシャルメディアが企業と顧客の関係を大きく変えると指摘。ネット上のクチコミで、市場はより民主化されていくということです。

コトラー教授はインタビューに応えて述べています。

「70年代から80年代には日本企業がチャンピオンと言われた時代がありました。『よりよい製品をより安く作る』ことにかけてチャンピオンだったのです。

当時はそれだけで欧米のメーカーとの違いを出すことができました。クルマ、家電製品、コピー機、オートバイなどがそうでしょう。でもイノベーションで成長したものではありません。

成功はいいことですが、若干、守りに入っていましたね。失敗を恐れすぎています。そこから成長は望めません。チャンピオンということで、傲慢になっていたのだとみています。

最も重要なことは戦後の日本を牽引してきた松下幸之助氏、本田宗一郎氏、森田昭夫氏のような創業者でクリエーティブな考えを持つ人材の系譜が途絶えてしまったことです。

マーケティングでは、必要な「4つのP」を提唱しましたが、日本ではまだ理解が進んでいない気がします。マーケティングそのもののステイタス(地位)が低いですね。

どうもマーケティングをプロモーションとだけ捉え、テレビで30秒の広告を打てばいいと考えているだけのビジネスパーソンが多くいます。

マーケティング担当者が果たして製品開発にまで入り込んでいるのでしょうか。経営全般に深く関わるべきですが、日本の企業の大半はそれにふさわしい職種となっていません。

米国などではCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー=最高マーケティング責任者)という役職があります。最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)
などは日本にも定着しましたが、CMOを据えている会社はごく一部です。

CMOは市場と深く関わり、どのような商品を先々つくるのかということに参画しなければなりません。

なぜ日本はCMOが育ちにくいのか? 経営トップがマーケティングによって製品や組織を変えることができることを認識していない。企業が目指すべき重要な役割を担えることに気づいていないのです。

自社について,顧客により深く理解してもらい、頼るくらいの特別の感情をもってもらうまでの関係を築くことが大切です。『この会社は自分のためにここまでやってくれるのか』と思ってもらうことです。」(了)

*10日から18日まで夏期休暇に入ります。本ブログもお休みさせていただきます。お盆休みを元気でお過ごしください。