いちど、いろんなおもいを整理してみよう。

 

 

あの時、なにが起こっていたのか?

 

 

ペットの自然療法家

そのスペシャリスト。

そして、医療従事者(人間の)でもあって。

 

 

これまで、たくさんのコと一緒に暮らして

そのコ達をみおくった

志乃さんのお話を、聞いてみたかったんだ。

 

 

なんでもありの時間だよ。

そう言っていただいて、ホッとした。

 

 

だって、鼻水でぐちゃぐちゃになるのが

わかっていたから。

 

 

19歳と67日。

その犬生を全うした犬娘を

故郷の星、お空へとみおくってから

半年近くが経つ。

 

 

もう半年。

なんだかいつも

忘れ物をしているような気分で過ごしていた。

 

 

わたしのなかの特等席に座る

愛おしい存在が

目の前から消えてしまったのだ。

 

 

想像以上に

そこに空いた穴は大きかった。

 

 

セッションの内容は

話をしながら、わたしにあったメニューを

カスタマイズしていただけるという

とても贅沢な時間。

 

 

どこで刺したかわからないような

小さな棘みたいなものを

いっぽんいっぽん抜いていく、そんな時間だ。

 

 

ひとりで、でもいいけれど。

誰かと一緒は、とても安心する。

 

 

いっぱい話した。

 

 

そして、泣いて、笑った。

 

 

人は真実に触れた時、泣くか笑うかする。

そう、どこかで耳にしたことがある。

 

 

なんで?どうして?なんて

そこには必要ないんだ。

 

 

そして

ヒプノセラピー&アニマルコミュニケーション。

初体験のセッションが始まった。

 

 

ここから先は

あくまで、わたしの体験だ。

この日のわたし達の様子を

そのまま、書き残しておこうとおもう。

 

 

誘導瞑想状態のなかで

犬娘のエネルギーを感じたり、交信する。

個人的には、抵抗のないジャンルだ。

 

 

抵抗がない、とはいえ

どこかしら緊張しているのがわかった。

 

 

犬娘に会いたい。

 

 

あの日以来

わたしに張り付いている強い願いを

いったん外してみよう。

 

 

もし、今、会えなくても

きっと何かで忙しいのだろう。

犬娘のことだ、今は気が向かない

ただそれだけだ。

 

 

そう思うと、徐々に身体が緩んでいくのがわかった。

 

 

少し前まで、大歓迎で迎えてくれていた

志乃さんのお家の犬達が、気配をひそめて。

気がつくと、周りが静かになっていた。

 

 

不思議なくらい、静かだった。

 

 

夢をみている状態。

そのなかで過ごしている時の感覚といえばよいだろうか。

色のある、リアルな夢をみている時のようだ。

 

 

犬娘は来てくれた。

背筋はピン!として、仁王立ちをしている。

 

 

遊びがはじまる前の、準備OKの顔だ。

 

 

そして、志乃さんの誘導で

わたし達の会話がはじまった。

 

 

犬娘の発する、エネルギーや言葉から

彼女はいつも、冷静に物事を捉えて

全てを受け容れている様子がうかがえた。

 

 

母と子、というより。

苦楽を共にする、大親友。

 

 

時々、ハッとするぐらいお姉さんな犬娘。

わたし達は、ながい間、そんな関係性だった。

今でもそれは、ちっとも変わらないようだ。

 

 

あの時、どんなことを思っていたの?

どんな風に、感じてた?

 

 

犬娘の返事に、つい笑ってしまう。

 

 

少しばかり、ツンデレな態度や表情も

生前と同様、そのままだった。

 

 

たしかに、わたしがよく知っている

愛しの犬娘に間違いなかった。

 

 

実は、これまでも。

お空の犬娘と、日常で会話をしていた。

それが幻想といわれようと、なんだろうと

いつでもそれは、容易にできることだった。

 

 

とはいえ

このようなかたちで

誰かに立ち会っていただける機会を

ずっと待っていたんだ。

 

 

はからずしも

志乃さんの誘導で

そんなセッションが進んでいった。

 

 

不思議と

近くに感じられても

今はそれぞれ、別々の世界に生きている。

そんな感覚を、自然に感じることができた。

 

 

その境界線を

今までより感じられるようになっていた。

 

 

そして、セッションのおわりに

アイスクリームを一緒に食べた。

 

 

やっぱり食べたかったよね。

 

 

このまま、寝たきりになってしまうかもしれない。

そう覚悟した矢先。

呆気ないぐらいに

ストンとあちらへ、旅立ってしまったのだ。

 

 

まだまだ、一緒の時間を描いていたから、、

 

 

アイスクリーム、約束してたの。

ずっと気になってたんだよ。

 

 

はい、どうぞ。

 

 

スプーンを口に運んでみた。

ペロッと、おすそわけの一口だけ舐めて

クルリと遊びに戻っていく姿も

いつも通りの犬娘だった。

 

 

「かみさまとの、やくそくだから。」

 

 

犬娘は、あの日以来

事あるごとに、わたしに、そう話してくれていた。

 

 

「ナホは、だいじょうぶなことが、わかってるよね。」

とも。

 

 

その時の犬娘は

どこか大人びた表情で、いつも毅然としていた。

 

 

とっても、しあわせ、には

とっても、その反対、がくっついている。

 

 

だから、いい。

これで、いい。

 

 

セッションが終わった。

 

 

そんなの夢か幻だよ。

そう思われる方もいるだろう。

 

 

ただ、そんな夢も、もうひとつの現実だ。

 

 

そんな、もうひとつの世界のなかで

犬娘とわたしは

一緒にアイスクリームを食べたのだ。

 

 

それが、どんなに、幸せなことか。

 

 

これから先、犬娘をおもって

胸がギュッとなることは、まだまだあるだろう。

 

 

そうだとしても。

 

 

この体験で

どうしよもない思いや、些細な後悔までもが

幸せな記憶として、アップデートされたのは

紛れもない事実なんだ。

 

 

とっても、しあわせ、には

とっても、その反対、がくっついている。

 

 

だから、いい。

これで、いい。