toi toi toi

そんなおまじないの歌があることを知ったのは

犬娘と出会ってから

ずいぶんずいぶん後のことだ。

 

***

 

時々、ふら~っと覗いていたペットショップ。

年明け、ガラスのお部屋へ入りきらないコ達が

ダンボールの小部屋にたくさんいて。

 

 

そのなかに

ムクムクとして、下を向いて

ちょっとだけ、時々、咳をしているコがいた。

 

 

あなた、ひつじさんみたいだねぇ。

かわいいねぇ。

トイプードルっていうんだね。

おんなのコなの?

 

 

そっかぁ、それじゃあ

といこちゃん、だね!

 

 

しばらく、その可愛らしい小さな犬とお話をして。

うちでは、お留守番が長くなっちゃうから、、

ごめんね。幸せになってね。と

その場を離れようとすると。

 

 

カシャカシャカシャ!と

ダンボールの壁を、勢いよく鳴らしだした。

 

 

わたしは慌ててその場に引き返して

また話しかけた。

話をしている間は、クゥンクゥンと言いながら

静かに聞いていてくれる。

離れようとすると、カシャカシャカシャ!

 

 

それを何度か繰り返して、、、

 

 

そうして、うちのコになってくれたんだ。

 

 

 

 

あんまり大きな声を出さないから

初めてワンワンって、元気な声をきいた時

ほっとして、嬉しかったんだ。

 

 

そして、最期にワンワンって言ってくれた声も

とってもやさしくって。

 

 

といこ。

19歳と67日。

今日は、はじめての月命日。

 

 

あの日から1ヶ月。

もういない。と

いつもそばにいる。のあいだを

行ったり来たりしている。

 

 

あの日までの、1週間、10日間、、

何度もその変化を振り返ってしまう。

 

 

そして、いつもと何かが違う。

なにか、大きな決断をしたかのような

最後の3日間。

 

 

いつもどおり、普段と変わらない時間のなかで

その時がきた。

 

 

実際には、いつもどおり、とは到底言い難い

肉体の変化を、感じていたに違いないにも関わらず。

 

 

最期の瞬間まで

その強さと、やさしさを

わたしに残してくれた犬娘。

 

 

眩しすぎて、尊すぎて。

 

 

それにひきかえ

今のわたしは、ちっちゃな子供みたいだ。

 

 

というか

今までずっと

わたしが抱っこしているようで

わたしのほうが、抱っこされていたのかもしれない。

 

 

たくさんのことを教わって

ずっとずっと見守られてきたんだ。

 

 

そしてこれからも。

 

 

近くて遠い。

遠くて近い。

 

 

あったかくて愛おしい

不思議な感覚に包まれながら。

楽しそうに元気に走りまわる、キラキラした姿に

いつものように、話しかけてみる。

 

 

 

 

ありがとう。

ありがとう。

といちゃん。ありがとう。

 

 

また会う日まで。

また一緒に、いっぱい遊ぼうね。