★1955年トヨペット・マスターライン 初代マスターライン ~ 自動車カタログ棚から 229 | ポルシェ356Aカレラ

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今日2014年6月21日の朝日新聞 朝刊に「あなたの思い入れがある日本車アンケート 結果」という記事が載っていた。朝日新聞のデジタル会員1592名の回答を集計したもので、結果は以下の通り記載されていた。(10位以下は省略)

第1位: 日産スカイライン(GT-R含む)
第2位: 日産フェアレディZ
第3位: トヨタカローラ
第4位: いすゞ117クーペ
第5位: 日産ブルーバード
第6位: スバル360
第7位: トヨタ2000GT
第8位: ホンダシビック
第9位: トヨタマークⅡ
第10位: トヨタセリカ


調査対象がクルマが趣味のマニアではなく一般の人でアンケート対象の各車種とも年代も何代目といった限定もなく、漠然と車名で回答するようなかなりアバウトなアンケートという印象だけれども、実際に何らかの形で乗ったことがあるなどで思い入れがあるクルマということが主眼のアンケートだったようである。結果をみると、まずベスト5中の3車までが日産車ということに驚く。今では知らぬ人もいない泣く子も黙る名車トヨタ2000GTよりも117クーペの順位が上というのも不思議な印象ではある。スカイラインについては、80歳の方が昔スカイラインに乗っていて、「わー、スカイラインだ~」と通りがかりの中学生に指差されたことが印象に残っている旨を回答されていたそうで、もう今から42年前の1972年(昭和47年)にハコスカからケンメリにフルチェンジした時に中1だった私も実際、ケンメリが通ると指差すことはなくとも思わず立ち止まって見入っていたような気がする。それほど、歴代スカイラインで最高の66万台を売り上げたケンメリのインパクトは大きかった。カローラ、ブルーバード、シビック、マークⅡあたりは恐らく実際にかつて乗っていた人からの回答で票を伸ばしたのだろう。もし私がアンケートに答えるとしたら、1位スバル360、2位いすゞベレット、3位トヨタ2000GT、4位ブルーバード410、5位2代目クラウンといったところで個人的に思い入れがある日本車というと全てが子供の頃の思い出が詰まった1960年代のクルマとなってしまいそうだ。



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★今回の「自動車カタログ棚から」は前回ご紹介したトヨペット・トラック(第228回記事参照)とよく似たルックスを持った「初代トヨペット・マスターライン」をピックアップします。


★1955年(昭和30年)1月に戦後の本格的なトヨタ製乗用車「初代トヨペット・クラウンRS型」(本シリーズ第98回記事参照)と同時にデビューした「トヨペット・マスターRR型」(本シリーズ第35回記事参照)の派生車種として商用車トヨペット・マスターラインが1955年(昭和30年)11月にデビューした。
トヨペット・マスターRR型のボディプレスを流用し、当初はピックアップ・トラック(型式RR16:シングルシート)とライトバン(型式RR17)が発売され、翌1956年(昭和31年)8月に乗用車トヨペット・マスターのトランク部分を荷台にしたようなスタイリッシュなダブル・ピックアップ(型式RR19)が追加発売された。名称は乗用車トヨペット・マスターから派生した商用車であることから「トヨペット・マスターライン」と命名された。
クラウンにおけるR型エンジンのパワーアップに追随して、当初48psだったエンジン出力は1956年(昭和31年)に55ps、1958年(昭和33年)4月に58psにアップされた後、トヨペット・トラックのフルモデルチェンジより1年3ヵ月早い1959年(昭和34年)3月に初代後期型RS20系クラウン(第101回記事参照) をベースとした2代目マスターラインにバトンを渡した。
なお、マスターラインのデザインは関東自動車工業の菅原留意氏を中心とするグループが手掛け、ボディ製造も関東自動車工業がおこなった。


★前回のトヨペット・トラックの記事でもご紹介した通り、初代マスターラインとトヨペット・トラックの外観上の差異は、ピックアップにおいてはキャブと荷台がマスターラインでは一体となっているのに対してトヨペットトラックでは荷台がキャブと分離しキャブ直後に頑丈な鳥居を備えていること、フロントグリルおよびバンパーがマスターラインではクロームメッキされているのに対してトヨペットトラックでは安価な塗装となっていること、マスターラインに付けられていたバンパーオーバーライダーがトヨペットトラックでは省略されていることなどがあり、ヘビーデューティーなトヨペット・トラックに対してマスターラインはよりマイルドかつスタイリッシュで乗用車並の乗り心地をもった商用車という位置付けであった。
トヨペット・トラックベースのライトバンおよびダブルピックアップとマスターライン・ライトバンおよびダブルピックアップとの外観的な見分けは遠目には難しいが、前述の差異に加えてトヨペット・トラックベースの車両はタイヤサイズが大きくサスペンションはマスターライン以上に強化されていた。小型車規格の変更に伴って1958年(昭和33年)7月にデビューしたロングボディのトヨペット・トラックRK35型ベースの車両はマスターラインよりもボディが一回り大きいのでマスターラインと区別はしやすい。但し、トヨペット・トラックRK35型と初代マスターラインの併売時期は1959年(昭和34年)3月までの僅か9か月間であった。


★マスターラインは1962年(昭和37年)登場の2代目40系クラウンをベースとした3代目まで存続し、1967年(昭和42年)登場の3代目50系クラウン以降はマスターラインの車名は消滅し、単に「クラウン・バン」「クラウン・ピックアップ」の名称となった。
マスタ-ラインと言うと私は世代的に2代目クラウン(第102回記事参照)をベースとした最後のマスターライン3代目が子供の頃に街で見かけた懐かしいクルマなのですが、今回はトヨペットマスター・ベースの初代のみのご紹介に留め、2代目および3代目マスターラインについては項を改めてご紹介します。
なお、トヨタでは乗用車ベースの商用車の名称として「~ライン」の名称を初代および2代目コロナの商用車にも「コロナライン」として使用している。



【主要スペック】 1955年 トヨペット マスターライン ピックアップ(RR16型) 1955 Toyopet Masterline Pickup truck
全長4275㎜・全幅1670㎜・全高1600㎜・ホイールベース2530㎜・車重1180kg・FR・R型直列4気筒OHV1453cc・最高出力48ps/4000rpm・最大トルク10.0kg-m/2400rpm・変速機3速コラムMT・乗車定員3名・最大積載量750kg・電装系12V・最高速度:不明・販売価格71万2000円



●1955年 トヨペットマスターライン・ピックアップ 関東自動車工業広報写真 
この写真は1956年(昭和31年)7月に 技報堂より発行された恐らく日本初のカーデザインの専門書「インダストリアルデザインⅥ」(監修はマツダ各車のデザインで有名な小杉二郎氏、執筆はトヨタの森本真佐男氏、関東自動車工業の菅原留意氏等)に掲載されたもの。この時代は未だフェンダーミラーの普及前でスタイリッシュなドアミラーが付いている。ホイルキャップは装着前の状態。
写真トラック


●1955年 トヨペットマスターライン・ライトバン 関東自動車工業広報写真 
この写真も上のピックアップと同様に技報堂「インダストリアルデザインⅥ」に掲載のもの。
写真ライトバン



●1955年11月 トヨペット マスターライン ピックアップ RR16型 専用カタログ (A4判・2つ折)
トヨタカタログNo.347。初期のトヨペットクラウンRSおよびマスターRRと同じ48ps・R型エンジンを搭載した初期のマスターライン・ピックアップ専用カタログ。フロント・グリルも前期型トヨペット・マスターと同じ意匠。
55トラック表紙

中面から
初期型はスペアタイヤが荷台に置かれていた。
55トラック1中スペア荷台

48馬力R型エンジン
55トラック2中48エンジン

裏面スペック
55トラック3中スペック

ピックアップ図面
55トラック4中図面



●1955年11月 トヨペット マスターライン ライトバン RR17型 専用カタログ (A4判・2つ折)
トヨタカタログNo.348。ピックアップとカタログナンバーは連番。これも初期のクラウン、マスターと同じ48ps・R型エンジンを搭載した初期のマスターライン・ライトバン専用カタログ。ピックアップ同様、この初期型ではスペアが荷台に置かれている。
55ライトバン表紙

中面から
55ライトバン1中

室内&500kg積の荷台
55ライトバン2中室内&荷室

荷台左側は大きなスペアに占領されている。
55ライトバン3中スペア荷室内

裏面スペック
55ライトバン4中スペック

ライトバン図面
55ライトバン5中 図面



●1956年?月 トヨペット マスターライン ピックアップ RR16型 専用カタログ (縦18×横25.5cm・4つ折)
トヨタカタログNo.390。出力を55psにアップしたR型エンジンを搭載した最初のマイナーチェンジ後のピックアップ専用カタログ。フロントグリルがトヨペット・マスター後期型と同じものに替えられている。スペアタイヤは荷台からリア下部に移された。
56トラック表紙

中面から
56トラック1中全体
56トラック2中

初期型のスペアがなくなり広々とした荷台。
56トラック3中スペアなし荷台



●1956年?月 トヨペット マスターライン ライトバン RR17型 専用カタログ  (縦18×横25.5cm・4つ折)
トヨタカタログNo.364。55psにパワーアップしたR型エンジンを搭載したマイナーチェンジ後のライトバン専用カタログ。ピックアップ同様フロントグリルがトヨペット・マスター後期型と同様のものに替えられている。
56ライトバン表紙

中面から
56ライトバン1中全体

サーモンピンクのPOPなバン
56ライトバン2中ピンクバン

コラムリモコン式変速機&55馬力エンジン
56ライトバン3中リモコン変速機&55エンジン



●1957年?月 トヨペット マスターライン 総合 本カタログ  (縦23×横26cm・12頁)
トヨタカタログNo.404。ピックアップ、ライトバンに加えて1956年8月に追加されたダブルピックアップ(カタログ上の記載は「ピックアップ・ダブルシート」)の3車種を掲載。
57表紙

中面から
57中(1)

ピックアップ・シングルシート
57中(2)ピックアップ

追加されたダブルピックアップ。この時代のクラウン等のカタログによく登場する黒い犬が右下に登場。
57中(3)ダブルピックアップ

ダブルピックアップのリア
57中(4)Wピックアップリア

ダブルピックアップ図面
57中(5)Wピックアップ図面

ライトバン。オマケ1の当時の木製キットの箱絵の元となった絵。
57中(6)ライトバン模型の絵

55馬力エンジン
57中(7)55馬力エンジン

デフ&シャシー
57中(8)デフ&シャシー

裏面スペック
57中(9)スペック



●1958年4月 トヨペット マスターライン 総合 簡易カタログ  (縦17×横24cm・3つ折)
トヨタカタログNo.516。表紙はピックアップトラックだが、ライトバンとダブルピックアップも掲載した総合簡易カタログ。エンジン出力を58psにアップ。ボンネット先端のエンブレムが消え、フロントグリル中央が逆三角形となり、そこに小さなエンブレムが付けられた。更にボディ前半にはサイドモールが追加された。
58簡易表紙

中面から
ピックアップ・シングルシート
58簡易1中ピックアップ

ダブルピックアップ
58簡易2中Wピックアップ

ライトバン
58簡易3中ライトバン



●1958年4月 トヨペット マスターライン 総合 本カタログ  (縦23×横25.5cm・12頁)
トヨタカタログNo.515。カタログナンバーは簡易カタログと連番。
58本表紙

中面から
ピックアップ・シングルシート
58中(1)ピックアップ

「マスターラインで楽しいレクレーション」のコピー
58中(2)レクレーションピックアップ

ダブルピックアップ
58中(3)Wピックアップ

スタイリッシュなダブルピックアップでピクニックの図
58中(4)ピクニックWピックアップ

ライトバン
58中(5)ライトバン

折りたたみ式のリアシートにより積載量は250kgから500kgまで調整可能。
58中(6)折り畳みリアシート

オプションの超旧式ラジオ
58中(7)オプションの旧式ラジオ

裏面スペック
58中(8)スペック




★オマケ(その1): 三和模型 1/22スケール程度 1957年トヨペット・マスターライン・ライトバン 木製キット
当時定価:不明。全長約19cm程度。プラモデル登場以前の木製組立ソリッドキット。縦13×横26cmの大柄な箱に入った木製組立キットとしては高級豪華な製品。モーターで走らせる電動キット。箱絵(ボックスアート)は1957年の総合本カタログの中の絵が流用されている。絵のサイズまでカタログのものと全く同じ。しかし、カタログには描かれている背景が省かれクルマの下の陰の形が微妙に異なる。トレーシングペーパーなどを使って描き写したものだろうか。箱絵や組立説明書の印字がライトバンではなく全てライト「パン」となっているのが可笑しい。この時代、まだライトバンという名称が一般的ではなかったということだろうか。
三和キット(1)

箱側面にも「LIGHT VAN」でなく「LIGHT PAN」の印字
三和キット(2)

ライトバンではなく「ライトパン」の印字。
三和キット(3)ライトパンの印字




★オマケ(その2): スタジオKAN 1/43スケール 1958年トヨペット・マスターライン・ダブルピックアップ
全長10cm。スタジオKAN・ストリームライナーシリーズNo.32。製作:松谷 寛氏。1951年ダイハツ・ビーや1961年スバル・スポーツの記事で紹介したミニチュアと同じシリーズ。他には存在しないマニアックな車種のミニチュアが多い。陶器製の小さな楽焼のような造りで各車共、色違いも数種作られている。
ミニカー(1)
ミニカー(2)
ミニカー(3)
ミニカー(4)
ミニカー(5)