★近鉄ビスタコーチ (KDD-60型）は、1958年(昭和33年)に近鉄10000系として鉄道車輛での世界初の2階建て電車特急を実現させた近畿日本鉄道が1960年(昭和35年)にデビューさせた日本初の2階建てバス。
日野ブルーリボンBD系バスをベースにエンジンをリアに移し、中間部をフレームレスの2階建てとした日野初のリアアンダーフロアエンジンバスであった。また、日本初のノンステップバスでもあった。近畿日野ヂーゼルによる下回り・エンジン7698cc(150HP)に近畿車輛による当時としては非常にモダンなボディが載せられた。
バスの前後は通常のバスと同様の構造で中間部のみが2階建てとなっており、2階席へは１階の後部車室から階段で登る形が取られた。当初は上本町六丁目～牧岡間の牧岡線、次いで大阪市内と石切神社前を結ぶ路線にも投入された。1編成のみに終わった鉄道車両「近鉄ビスタカー10000系」と同様に1台のみの試作車的な車両であり、短期間で廃車・消滅したと言われる。
★翌1961年(昭和36年)にはKDD-60型のボディデザインを生産性を考慮して全体にオーソドックスなものに改め、日野RC10バスベースのDK20型エンジン10000cc(195HP)に出力をアップした量産車KDD-1型8台が製造され、大阪～奈良ドリームランド間の路線等に投入された。1編成のみに終わった近鉄ビスタカー10000系に対するビスタカー10100系に当たる量産型ビスタコーチである。しかし、量産車も近鉄の関連会社での運行を経て1960年代後半の早い時期に全車が廃車・消滅したと言われる。
時は下り1985年(昭和60年)、近鉄は初の本格的2階建て観光バス「日野グランビュー」を導入した際にも「ビスタカー」の愛称を与えている。
【主要スペック】 (型式：近畿KDD-60/日野ブルーリボンBD)
全長11304㎜・全幅2493㎜・全高3491㎜・ﾎｲｰﾙﾍﾞｰｽ6100mm・車重9140kg・水冷4サイクル６シリンダーDS40改造型7698cc・最高出力150HP/2400rpm・最大トルク48.5kgm/1600rpm・乗車定員85名(立ち席なし)・最高速70km/h
●1960年 近鉄ビスタコーチ カタログ（原本）
※中頁から
※図面
●浅草玩具製 約1/35スケール 1960年 近鉄ビスタコーチ
※実車を模して1階席後部には2階に上る階段が付いている。また、リアウインカーは懐かしい矢印型（矢印型後部灯火式方向指示器)。
●1960年代の絵本から
近鉄ビスタコーチや近鉄ビスタカーは何れも日本初の2階建て花形車両であったため、当時の絵本の題材としてよく取り上げられた。
※ビスタコーチと1961年トヨペット・スポーツ(試作車：絵には実車には存在しないオープンボディが描かれている)
※ビスタコーチとマツダ・コスモスポーツ
※ビスタコーチとヘリコプター
※近鉄ビスタカー10000系(ビスタⅠ世)
後ろの道路には1959年シボレー等が描かれている。
※近鉄ビスタカー10100系(ビスタⅡ世)
