アイスダンス考 | ロンドンつれづれ

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マークのキャンプから昨日帰ってきて、今日。

体中が痛い。

ストレッチであちこち痛いのと、2日間、(私にとって)無理な姿勢で1日4時間もスケートをしたのがたたって、背中じゅうの筋肉、首から腰、尻、足の裏側まで、ぜんぶ痛い。日ごろ、どれだけ姿勢が悪いんだか、あらためて思い知ることになった。

基本、猫背が許されず、体をつねにそらしてすべての動作を行うので、胸を張るための肩甲骨の辺りの筋肉、首をそらせるための筋肉、肩を落として腕をまっすぐ伸ばすための筋肉、足をまっすぐに前にあげたり、後ろに上げて保つための筋肉(腿やお尻)が、すべて悲鳴を上げております…。

バレエやフィギュアスケートを小さいときからやっている人は、普段から姿勢もいいですね。

こちらは、「ブレード当選者」の写真ですが(マークのフェイスブックから拝借)マークも奥さんのキャシーも、本当に姿勢が良い。私はなんだか油断したゆるんだ立ち方をしてますな。

(マークはイギリスのアイスダンサーで2014年秋のグランプリ中国の試合をBユーロで解説。また2016年の世界選手権の解説もBユーロで行った人。この記事の写真の無断転載はすべてご遠慮ください)



さて、ロンドンのコーチ、ゾイアもアイスダンサー、シェフィールドのマークもアイスダンサーである。

なので、ふたりとも姿勢とか足のエクステンションにはかなり厳しい。しかし、これが何度言われてもできない。

足など、日本人特有の膝が飛び出して曲がった悪い脚なので、「足の形が悪いからこれ以上伸びない」といって、コーチには言い訳をしている。しかし「ちが~う!」と怒られる。

なぜなら、日本人の優秀なスケーターさんたちは、オフアイスで見ると、特に足が長いわけでも、その形がきれいなわけではない、と。 しかし、その姿勢の良さと、つま先を伸ばして外側に向けることで、演技中は首や足が長く、手足がまっすぐに見えるのだ、と。

膝こぞうがとび出していると、いくら本人が伸ばしているつもりでも、足が伸びてはみえない。そこでやらなくちゃならないのは、ハムストリングを伸ばすことである。これは腿の付け根から膝の裏を通っている筋で、これが硬いと、膝が飛び出して見えるのである。そして、足がまっすぐに伸びない。

私は自慢ではないが、生まれてからこのかた床に足を前に投げ出して座って、90度に背筋を伸ばすことができたためしがないほど、ハムストリングスは固いのである。そして膝は飛び出している。もうこの年でこれは治すことはできないのではないか…。というより、年々歳々、体つきは悪くなってきている気がするのである。

しかしコーチらは厳しい。床にクッションを置いて、そこにかかとをのせて前屈をしろ、という。そうすると足がしなって、いやでも膝が引っ込むのだ、と。そして、股関節を開くために、今度はヨガのロータスポジションに膝をひらき、両膝の上に、誰かに立ってもらえ、というのである。そ、そんなゴーモンな…。しかし、きっと選手たちはこういう過激なことをして、体を柔らかく保っているのだろう、それも毎日。「毎日やらなければ、体はすぐに元に戻ってしまう」とマークも口をすっぱくして言う。

そうでなければ、足を180度以上にひらくアウトサイドのイーグルなんてできないし、イナバウアーなんてのも夢のまた夢だろう。スパイラルも、お尻より高く上がらなければ認定してもらえないし、これだって、90度以上足の開かない私には至難の業なのである。そもそも、普通にストロークをしているときですら、フリーレッグが美しく伸びていなくてはならない。さらに上半身がしっかり反って、スケーティングレッグのかかとより前に頭があってはいけない。上半身もしっかり柔軟でなくては美しく見えない。腕も、肩より後ろにそらした方が、美しいのである。肩の関節の可動域も広げなくてはならない。50肩になんてなってる場合ではないのである。

さらに、柔軟性だけでなく、筋肉も必要で、シットスピンなんて、いったいどれだけ腿の筋肉が必要なんだか。フリーレッグを前に高く上げてバックアウトで後ろにザーッと滑るとき、腿の筋肉が、ブルブル震えるのである。そう、膝をまっすぐにして、つま先を伸ばし外側に向けないと、ちっとも美しくない。ただ上げてるだけじゃダメなのだ。もちろんバランスを崩すとあっという間に後方に転倒して、尻、ひじ、後頭部を硬い氷に強打するから、油断はできない。

ここに、サン・ジェルべのジュニアのアイスダンスの写真がある。主に練習の時に撮った写真だけれども、ジュニアと言ってもこれだけ姿勢が決まっているのである。


この子達は、たしかまだ14才とか15歳だったと思うけれど、胸がしっかり開いて、腕がまっすぐに伸びてますね。腕の伸ばし方に迷いがない。



こちらの女性も、これはバックに進んでいると思いますが、タックしたフリーレッグが、実にまっすぐに伸びているし、胸も開いています。ためしにこのポーズやってみてごらんなさい、どんだけ苦しいか…。



こちらは、男性と女性の足が氷に平行の高さで保たれ、つま先までピンと伸びた緊張感があります。男女、どちらも姿勢も、かなり背筋や腿の筋肉を使ってますよ…。



こちらも指先の表現まで行き届いています。女性も男性も、背筋がぴんとそってますね!



それでも、こういったジュニアの写真をみせながら、マークは、「シニアと比べると、膝が伸びきっていない」とか「高さが足りない」とか言うのである。とにかく、アイスダンスの姿勢は、どこを切り取っても油断の無い必要がある。上半身の姿勢、手足のエクステンション、バレエのような足のポジション、つま先は伸ばして外側をむけることで、すこしでも長く、まっすぐにみせること。

マークのフェイヴァリットは、シニアのフランス代表、パパダキス・シゼロン組だ。特に、男性ダンサーが優れているという。胸のオープンなところ、首を長く見せる頭の角度、あごの上げ具合、腕の動きが、大変に優れているそうである。フリーレッグの高さ、角度も完璧。すべてにおいて、「いかに動きを美しく見せるか」を知り尽くしたアイスダンサー。

今回、ブルースを私たちは習った。基礎のステップと手の動き。それだけでもなかなか難しく、音楽に合わせてステップを踏むことすらなかなかできず、体重移動に至っては、自分のペースでできない難しさを感じた。音楽についていけない。私はまだ、正しいエッジに乗るのに、時間がかかるのである。クロスロールも、ゆっくりならできるが、早い音楽に合わせるととたんにエッジがおろそかになる。マークが同じブルースを、彼なりのインタープリテーションで踊ると、とたんに氷上のバレエになるのである。その上半身の動き、腕のフラムボヤントなこと。首の傾げ方、フリーレッグの美しさ。比べる方が間違っているが、いつか少しでも近づけるかな。



ここに、ソロアイスダンスのブルースの試合のビデオがあるからごらんください。女性で、なかなかセンシュアルな動きをしていますが、こんな風に滑れるようになったら気持ちいいだろうな~!私の野望は、スケーティングスキルをここまで上げて、そしてそこにちょっとジャンプやスピンを取り混ぜて、プログラムをつくること。こんな情感豊かな表現は、やはり優れたスケーティングに裏打ちされたもので、へたっぴーにはとても表現まではいかないのである。


Terresa Vellrathさん。




同じ女性の、下はダンス・ムーブスをまとめたもの。これを参考に、練習しようっと。簡単そうにやっていますが、どれひとつとってみても、簡単じゃなさそうですよ…。




こちらは、ツイズルの練習。参考までに。



マーク・ハンレッティのキャンプビデオ

10月にある、Steps and Spinsのビデオ こちらは、まだ参加者募集中です。