理想の男 | ロンドンつれづれ

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今、毎晩、寝る前に平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」を読んでいる。 


このシリーズは全巻持っていて、少し時をあけては、何度も読み返しているのである。


仕事でへとへとになって夜中に帰ってきてベッドの中で読むには、マンガの次によろしいのである。 正義が必ず勝つし、ストーリーが単純で、登場人物がみな仲がよくて、安心して読めるのである。




そもそも、昔から時代劇が好きで、母親がファンだった大川橋蔵氏には、幼少のみぎりに抱っこされて写真に写っている。 だから、「新吾十番勝負」や、「銭形平次」など大好きなのである。


もちろん、池波正太郎や、藤沢周平も大好きで、その時の気分に合わせて読み分けている。



そして、「剣客商売」や、「御宿かわせみ」にでてくる男性はどうしてああも魅力的なのであろうか。



剣客のほうでは、主人公の秋山小兵衛はもちろんのこと、息子の大治郎も魅力的な男である。



しかし、女性が書いたという点で、「かわせみ」にでてくる若先生、神林東吾は八丁堀育ちの江戸っ子で、剣もすごいが気風がよく、女房にやさしく、正義感にあふれ、細かいことは気にしない、そして人が振り返ってみるようないい男ということで、まさに女性から見たら理想の男なのである。


やっぱり、男の魅力は、女性に書かせたほうがよい。 剣客もかわせみも、テレビ化されているが、東吾と大治郎は、どの役者がやっても、いまひとつ私の心に描いている彼らとはちょっとちがうのである。やっぱり理想化して読んでいるので、生身の役者さんがやっても、どうもぴんとこないのである。 人気マンガを映画化したり、劇団がやったりしても、どうもがっかりしたりするのと似ているかも知れない。 藤田まことの秋山小兵衛はぴったりだな、と思うんだが。



時代劇はおもしろい。


筋書きなどは人がかわるだけで大体同じなのだが、そんな中にも人情や当時の風物、そして食べ物などの記述が楽しいのである。


テレビドラマを見ると、女性の着ている着物の柄も美しいし、江戸時代、平安時代の男性の衣装は、大変にデザインもすぐれていて、美しいのである。



そして、池波正太郎氏の書くものは、食べ物がおいしそうである。


読んでいる最中に、「豆腐を大根おろしの中でさっと煮て、じゃこをふりかけたものを・・・」などとでてくると、もういけない。、


「ああ、豆腐が食べたい!!!」と気が狂いそうになるのである。


もちろん豆腐なんて近所のスーパーには売っていないので(大根もないし)、目の前にじゃこをふりかけた豆腐の姿がちらつくだけで、夢のような食品なのである。


「茶をかけた飯をさらさらとかきこみ、大根の浅漬けをばりばりとかんだ」などとあると、もういけない。


「ああ、お茶漬けが食べたい!!!」と気が狂いそうになるのである。


ご飯は、たいてい冷凍にしてあるから、それをチンして、永谷〇のさけ茶漬けのもとかなんかを降りかけて、漬物はキュウリにキムチのもとかなんかをまぶして間に合わせるのである。


ああ・・・・・。


話が、「いい男」から、「食べ物」になってしまった・・・!!  もとに戻さなくちゃ。



そんなわけで、私の理想の男は、「かわせみ」にでてくる、神林東吾なのである。


年のころも、きっと34,5歳。男の年齢で、35-40歳ぐらいが一番魅力があるであろう。 女房にはとことん甘くて優しくて、ほれ込んでいる。ここもよろしい。


そして、剣術にかけては滅法強いくせに、普段はコタツに足を突っ込んでのらくらしていて、のんきである。そして、いったん抜き身を持ったら凄いような腕、しかしそのワザは春風駘蕩、おおらかで軽やかなのである。


女にはもてるが自分からは手を出さない。が、朴念仁でもない。友情にあつく、誰からも好かれる。そして、武士と言う生まれ育ちだが、べらんめえの江戸っ子言葉で、えらそうにしないのである。豪放磊落、そして人助けには労を惜しまない。 強くて優しい、女性の理想!



どうです、男の魅力をすべて兼ね備えているでしょう。


こんな、かっこいい男がこの世に本当にいるかしら。



いなくてもいいんでしょうね、きっと。 理想の男、強くて優しくて、見た目も美しくて、そんなかっこいい男が活躍して悪をやっつけてくれる、そんなストーリーが次から次に読めるから、きっと時代物はおもしろいんでしょう。


若い頃は、「水戸黄門なんて、始まって2分で結末がわかるじゃん」などと思っていましたが、それでいいんでしょう。


お客は、安心してみていられて、最後にはすけさん、かくさんが、きっと悪者をやっつけてくれて、「この印籠が目に入らぬか!」「あっ、へへえ~っ!」で終わるのである。 これは、日々複雑な人間関係や、自分じゃどうにもできない理不尽にむかついている人たちには、一服の清涼剤なのであって、こういうのを見ることで、少しでも狂った精神バランスを整えることができるのである。


この世にはいるはずのない、理想のかっこいい男を「御宿かわせみ」のなかに読みながら、隣で寝ている夫の鼻毛をみつめる私。


あの、誕生日にあげた「鼻毛カットマシーン」を、この人はどこへやったんだろうか・・・と考えながら眠りに付くことも、また平和なのではないだろうか。