映画の音声解説について〜音声解説の魅力、楽しむ上での注意点など~ | シネマーグチャンネル

今回は映画のDVDやBlu-rayの特典として収録されていることがある音声解説(オーディオ・コメンタリー)について紹介します。

 

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【映画の音声解説(オーディオ・コメンタリー)とは】

映画のDVDやBlu-rayには特典が収録されていることがあります。収録されている特典には、メイキングやインタビューのような映像特典のほかに、音声解説(オーディオ・コメンタリー)のような音声特典もあります。

この音声解説が収録されているDVDやBlu-rayで、この音声解説を選択して本編を再生すると、本編を見ながらその映画の監督や出演者がそのシーンの意味や撮影時の話などを話してくれるのを聞くことができるというものです。音声解説と言っても、監督がシーンの意図などをがっつり解説しているものもあれば、キャストが映画を見ながらワイワイしているところを聞くようなものまで幅広いです。その意味だからかまでは分からないが、洋画の場合「音声解説」、邦画の場合「(オーディオ)コメンタリー」と表記されることが多いです(あくまでその傾向を感じるだけであり逆のパターンもある)。

【音声解説の魅力】

<映画監督>

映画監督による音声解説の場合、製作経緯、その場面の意図、キャストやスタッフへの指示、キャストの印象、ロケ地探しや特殊効果、音楽や美術の意図、撮影時のトラブル、映画全体のビジョンや監督の映画論など、映画のパンフレットにさえ載っていないようなことを聞くことができます。また、映画監督というキャストに比べると表舞台に立つことのない人の語りも面白いです。

<キャスト>

キャストによる音声解説の場合、そのシーンでの演技プランや役作りの方法、撮影時の苦労話、他のキャストやスタッフとの交流、キャストの演技論、キャストから見た映画監督についてなどを聞くことができます。

<スタッフ>

スタッフによる音声解説の場合、その専門分野の立場(プロデューサー/脚本/撮影/音楽/編集/美術/衣装/メイクアップ/視覚効果など)からどのように製作に携わったのかなどを聞くことができます。また、例えば視覚効果のスタッフの立場から見た演者の魅力など、違う専門分野の人から見た感想や意見を聞くことができるのは貴重です。

【音声解説の担い手】

<映画の製作に携わった人>

この音声解説を担うのは、その映画関係者(映画監督/プロデューサー/キャスト/声優/脚本/撮影/音楽/編集/美術/メイクアップ/視覚効果などのスタッフや原作者/主人公のモデル/武術指導/アドバイザーなど)が担うことがほとんどです。監督やキャスト以外のスタッフは普段表舞台に出てこられることが少ないので、そのような人の語りを聞くことができるのは貴重です。

<担当した意外な人>

かなり古い作品だと映画評論家、大学の教授、その作品の監督やキャストの子息によって行われることがあります。また、意外なところを下記に列挙します。

「マッド・マックス(1979)」…主人公のマックスの日本語吹き替えを担当した安原義人による音声解説。
ゴーストバスターズ(1984)」…ファンによる音声解説。
マトリックス(1999)」…哲学者による音声解説。
グッドフェローズ(1990)」…主人公のモデルになったギャングのヘンリー・ヒルと元FBI捜査官による音声解説。

RED/レッド(2010)」…本作のアドバイザーで元CIAのロバート・ベアによる音声解説。

<1人でやることもあれば、大人数でやることも>

映画監督1人が担当することが多い印象ですが、映画監督とプロデューサー、プロデューサーとキャストなど2名でやることもあるし、キャストやスタッフが大勢に介して行われるものもあります。また、「ゴジラシリーズ」の音声解説ではアナウンサーなどが聞き手となり、当時のキャストや監督が答えるような形のものもあります。

 

<日本語字幕の気遣い>

 

複数で担当している場合に誰が話しているのかを字幕の頭に表記してくれる場合もありますが、ない場合もあります。また、音声解説の冒頭で自己紹介をする場合もあれば、ない場合もあります。なので、自己紹介をせずに複数で話し始め、字幕の頭に誰が話しているかを記してくれなければ最初から最後まで誰が誰かを特定できないこともあります。

【“エセ”音声解説】

音声解説と言っても、実は別に撮ったインタビューの音源をそれっぽい箇所に当てはめているタイプの音声解説もあります。映っている場面を見ながら「実はこの場面にはこういう意図があって…」「撮影の時はトラブルがあって…」などというタイプの音声解説を求めている人にはがっかりな部分もあるでしょう。特に大人数で音声解説をやっているタイプはまさにこれが多いです。

例えば私が見た中では、「雨に唄えば(1952)」「カジノ(1995)」なんかはこのタイプでした。特典映像に収録されているインタビューを確認するとその時の音声がそのまま音声解説に当てはめられているものもありました。この辺りは確認しないと分からない部分もあるので残念ではありますが、ご留意ください。

【収録されている種類】

<入っていてもほとんどが1種類>

音声解説の特典はそもそも入っている映画の方が間違いなく少ないですが、入っていたとしてもほとんどが1種類です。

<稀に複数種類入っていることも>

特典が充実している映画のソフトであれば、2種類以上、稀に4種類(「悪魔のいけにえ(1974)」「チャイルド・プレイ(1988)」「セブン(1995)」「ショーン・オブ・ザ・デッド(2004)」など)入っていることもあります。さすがに4種類は数えられるくらいの作品数だと思いますし、5種類と言うのは見たことがありません。

【注意点】

この音声解説を楽しむ上で注意点があります。それらは下記の通りです。

<基本的にはソフトを購入しなければならない>

レンタル用のソフトや動画配信サービスでは収録されていないことがほとんどです。販売されているDVDやBlu-rayに特典として入っていることがほとんどですので、購入しないと音声解説を聞くことができないと考えたほうが良いです。ただ、一部レンタルDVDには収録されているものもありますし、動画配信サービスの「ディズニプラス」では音声解説も付与されているものがあります。

<すべてのソフトに入っているわけではない>

音声解説の入っている映画を見つけて、そのソフトを購入したとしても、古い型番のソフトには入っているが、新しく出たソフトには(権利の関係などの影響か)入っていないこともあります。また逆に、今までのソフトには入っていなかったが、何周年記念によって新録されて最新のソフトにしか入っていないということもあります。

<古い型番だと手に入れることが困難なものも>

そして古い型番のソフトにしか入っていないとなると絶版になっていることが多く、メルカリ等の中古市場から探す必要があり、手に入れることが困難なものもありますし、その手のソフトは高価になりがちです。

<収録されていても日本語字幕がついていないことも>

また、海外の映画であれば、海外で発売されているソフトには音声解説が入っていても、日本で発売されているソフトにはそもそも収録されていないこともあります。また、日本で発売されているソフトに、音声解説が収録されていても音声解説用の日本語字幕が付いていない場合もあります(「アパートの鍵貸します(1960)」「アウト・オブ・サイト(1998)」など)。英語のリスニングに問題ない方はそちらを購入いただいても大丈夫だと思いますが。

<基本的にオリジナル音声/日本語字幕(海外映画の場合)>

海外映画の音声解説は基本的に音声はオリジナル原語で日本語字幕付きのものになります。吹き替えされているのは「ターミネーター2(1991)」の2つ収録されている音声解説のうち、大勢のスタッフによる音声解説は日本語吹替まで収録されていましたが、このようなケースは例外中の例外だと思われます。

【音声解説の傾向】

<よく収録されている映画人>

音声解説の特典がよく入っている映画監督として、リドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、ジェームズ・マンゴールド、フランシス・フォード・コッポラ、デヴィッド・クローネンバーグ、マーティン・スコセッシ、オリヴァー・ストーン、ロバート・ゼメキス、テイラー・ハックフォード、ポール・ヴァーホーヴェン、ロバート・ロドリゲス、デヴィッド・フィンチャー、ギレルモ・デル・トロ、ロン・ハワード、ジェイソン・ライトマン、ベン・アフレック、是枝裕和、三木聡、行定勲、森田芳光、犬童一心、本広克行などが挙げられます。俳優別で見ると、トム・クルーズ、シルヴェスター・スタローンはよく参加しています。

<収録されていない映画人>

一方で、有名な映画監督なのに全くといっていいほど収録されていない映画監督は、スティーヴン・スピルバーグ、クリント・イーストウッド、ブライアン・デ・パルマ、ウディ・アレン、M・ナイト・シャマランなどです。

 

<2000年前後の作品>

DVDが発売され始めた2000年前後に音声解説の収録も盛んになったように思います。かつてはLDで音声解説用のソフトが発売されることもありましたが、おそらく稀なケースだったと思います。

 

<シリーズもの>

 

DVDが発売になるタイミングでシリーズ作品に音声解説を収録することもあり、「ゴジラ」「ガメラ」「若大将」「007」「スター・ウォーズ」などは古い作品でも収録されています。

 

<収録時期>

 

新作映画であれば、音声解説の初めに「収録日は〇年〇月〇日」や「収録しているのは試写が終わったタイミングです」という風に教えてくれることがあります。

【音声解説の収録されているソフトを探すには】

<本サイトで>

本サイトでは50音別に音声解説のある映画を一覧にしています。当記事の最下部にリンクがありますので、そちらからご確認ください。50音別にはしていますが、一部シリーズはタイトルよりもシリーズの名前を優先してまとめております(「若大将」シリーズや「ゴジラ」シリーズなど)。また、複数種類入っている映画についてはタイトルの右に何種類入っているかも記載しております。さらに、その音声解説を聞いたものは感想を記載しているものもございます。リンクからアクセスしてみてください。

もちろん私が確認しきれていないものもあります。確認でき次第、更新していきます。

<注意点>

ネットで注文する際によく利用される楽天やAmazonの作品ページには本当は音声解説の特典が入っているのに、特典の欄には何の記載もないというケースは多々ありますので、他サイトなども併せて確認いただくことをお勧めします(例えば同じタイプのものをメルカリで検索してソフトの裏面の写真が掲載されていれば、その収録されている特典の場所を確認するなど。)。当サイトでは、2重チェックして音声解説が収録されていると確認できた作品を載せています。

【海外の音声解説レビューサイト】

参考に海外の音声解説のレビューサイトのリンクを貼っておきます。ratethatocommentary.comというサイトです。これは海外映画に限りますが、収録されている音声解説を確認することはできます。ただ、海外サイトなので、タイトルを入れるとしても原題を入れてください。部分一致による検索もできますし、スタッフやキャスト名での検索もできますのでご活用ください。また、このサイトは管理人が作品を登録しているのではなく、サイトを訪問した人がタイトルを追加できる仕様になっています。また、それほど訪れる人が多くないためか、最近の作品は登録されていないのがほとんどです。古いタイトルを探す際の参考程度に考えてください。ただ、繰り返しになりますが、海外版にしか入っていないケースもあること、このサイトでも網羅できていない作品があることをご了承ください。

本サイトの音声解説作品一覧へのリンク

本サイトで紹介している音声解説のある映画は下記から探してください。随時更新していきます。よろしくお願いいたします。

 

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【映画本編と同じく良し悪しがある】

 

様々な情報を聞けると期待して音声解説を聞いてみても、映画本編と同様に期待通りのものが得られるとは限りません。半分くらい黙って映画を観ているだけで大して話してくれない音声解説もあります。

 

そのいい例がロブ・ライナー監督だろう。「ア・フュー・グッドメン(1992)」の音声解説を聞いたが、半分くらいは黙っており、話したとしても大したことを話している訳ではないので、かなりがっかりしたのを記憶している。また、彼は「スタンド・バイ・ミー(1986)」「恋人たちの予感(1989)」「ミザリー(1990)」でも音声解説を担っているが、上述のサイトでも評価は高くなく、「沈黙の時間がある」といったレビューも散見される。

 

その逆にサービス精神たっぷりに本編が始まってからエンドクレジットが終わるまで話し続けてくれる人もいる。大体の人はエンドクレジットになると「聞いてくれてありがとう」と言って終わってしまうことが多いが、話が尽きなければエンドクレジット中も見つけた名前を見てエピソードを話してくれることもある。

 

音声解説の満足度は映画のレビューサイト程情報が充実している訳ではないので、実際に聞いてみないとその良し悪しは分からないのが現状だろう。

 

【おすすめの音声解説作品】

 

エル・マリアッチ(1992)

 

ロバート・ロドリゲス監督がたったの7,000ドルで製作したアクション映画。この音声解説を聞けば、どうやったら7,000ドルで一本の映画を完成させることができるかが理解できる。また、映画が始まってから終わるまで喋りっぱなしであり、7,000ドルの映画の製作に徹底した準備が必要なように、この音声解説の準備も徹底している。音声解説を聞きたい人がどういうことを求めているのかまで理解した、まさに完璧な音声解説。

 

「ゴッドファーザー(1972)」

 

本シリーズすべてに監督のフランシス・フォード・コッポラによる音声解説が収録されている。この1作目では、監督としての実績がそこまでなく低予算と言う状況で、クビ寸前になりながらもスタジオと戦いながら何とか作り上げた話を聞くことができる。

 

また、大成功を収めた上で臨んだ2作目では、大型予算と自由を与えられ、その中で彼が作り上げた世界観について聞くことができる。そして、一度は落ち目を経験したうえで臨んだ3作目では、やりたくてもできなかったことの話や、起用した娘に関する話など聞くことができる。

 

他の映画の音声解説で別の監督が「フランシス・フォード・コッポラ監督の音声解説に憧れている」といった趣旨の発言をしていることを聞くこともあるので、音声解説と言えば「フランシス・フォード・コッポラ」というイメージも映画人にはあるかもしれない。

 

「タイタニック(1997)」

 

本作には音声解説が3種類も収録さているが、特にジェームズ・キャメロン監督による音声解説と、スタッフやキャストによる音声解説はオススメである。ジェームズ・キャメロン監督による音声解説を聞けば、どれだけ史実に忠実に作ろうとしたか、またこれほどの大作を作り上げる上での準備や心意気を感じることができる。

 

また、スタッフやキャストによる音声解説は大勢の音源を適所に当てはめたタイプのものである。このタイプのものは、話し手が映像を見ながら話しているわけではないので物足りなく感じがちであるが、さすがに大ヒットした作品だけあり、収録した音源、その音源を当てはめる箇所の編集も手が込んでいて素晴らしい。

 

ロボコップ(1987)

 

本作には監督のポール・ヴァーホーヴェン、脚本のエドワード・ニューマイヤー、プロデューサーのジョン・デイヴィソンの3人による音声解説が収録されている。特に話しているのはポール・ヴァーホーヴェンとエドワード・ニューマイヤーだが、ポール・ヴァーホーヴェンはこの音声解説も視聴者に楽しんでもらおうとサービス精神たっぷりにあれもこれも、しかも楽しそうに話してくれる。こちらの気分も明るくなる楽しい音声解説。

 

ロッキー(1976)

 

本作には3種類の音声解説が収録されているが、ソフトによって収録されている数が異なるのでご注意ください。特に後に新録されたシルヴェスター・スタローンによる単独の音声解説は、やはり「ロッキー」の生みの親だけあり、各キャラクターの背景や心情などを十分に説明できる奥深さがある。スタローンの考える重要な場面の話、ロッキーが帽子を被る設定など、映画会社と意見が対立しても押し通した話などは大変興味深い。

 

【まとめ】

 

もし気に入った映画があって、その映画のDVDやBlu-rayに音声解説が収録されていればぜひ聞いてみてください。映画に関する情報はパンフレットやネットの情報で事足りるかもしれませんが、関係者本人による語りで聞くと、その苦労や心意気はより伝わってくるかもしれません。また、気に入った音声解説があれば同じ人が携わった音声解説を探してみるのもありだと思います。もし少しでも興味が湧いたなら、私の作ったリストから探してみてください。中には音声解説の感想を記載している記事もございます。