「嫌い。嫌いです……。」


「…………え?」


唐突にそんなことを言ったかと思うと、ソファーに腰かけたまま、膝を抱えて向こうを向いてしまったキョーコ。


「嫌い……。」


「………………。

  俺が、何かした?」


キョーコの肩にそっと手を置くと、ぴくんと震えたのが分かった。

君が作ってくれた夕飯はきちんと食べたし。
今年はホワイトデーだって遅れずに当日に渡した。

今日はまだ、欲望に任せて君をーーーなんてことにも及んでいない。

俺の何が君をそう思わせてしまったのだろう……?


「ねぇ、キョーコ?
  こっちを向いて?
  ちゃんと話そう?」


「………嫌い………。」


困ったな……。
君に嫌われてしまったら、俺はーーー
そんな嘘みたいな話、信じたくない。

…………嘘みたいな…………?

あぁ。
今日は4月1日だっけ。

これがキョーコの可愛い嘘なら、俺も遠慮はいらない……かな?


「……キョーコ。」


向こうを向いたままの君を後ろから抱き締めると、やはり震えている。

まさか、俺をからかって笑いを堪えてる……?

それはあんまりだろう?


「キョーコ、可愛い顔を見せて?」


下を向いた君の顔を、少し強引にこちらを向かせるとーーー


「………………っ!?」


ーーーーーー泣いてる…………!?


「ぅぅっ…………嫌いですぅ…………」


ポロポロと涙を流す君。


「キョーコッ?
  …………今日がエイプリルフールだからって、嫌いはないだろう?」


そうだ。
君の可愛い嘘にしては、演技し過ぎじゃないか?

………………いや、まさか………………


「キョーコ……?」


君の両頬を包み込んで、零れる涙を拭いながら、“嫌い” と“涙” の理由が話されるのを待つ……。


「………………っ……。」


「うん?」


「……私……ばっかり…………貴方への気持ちが……大きく…て…………っ」


「ーーーえ?」


何だってーーー?


「……ちょっとした……ことでも、すごく不安になる……んです…………。
  そんな自分も……嫌で……っ」


更にポロポロと零れてくる君の涙。


「…………貴方のことが、好きすぎて……っ」


まったく、どうしてくれようか……この娘はーーー


「キョーコ。
  君を不安にさせてごめんね。」


頬を包み込んだままに、おでこをコツンと合わせると、震える君の体温が伝わってくる。


「でも、君の話してくれたこと……それは違うよ。」


「…………?」


驚いたように至近距離で俺を見つめるキョーコ。
涙は止まったみたいだ。


「君ばかりが俺への気持ちが大きいなんて、それはそれでとっても嬉しいけどね?」


クスッと笑った俺は、目を見開いたままのキョーコに、唇を軽く重ねた。

それだけで真っ赤に頬を染めるキョーコが愛おしすぎる。


「俺の方が、どうしようもないくらいに君のことが好きなんだよ?」


そう。きっと、俺の方が、ずっとーーー


「そんなっ……
  私の方がっーーー」




大好きーーー。






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あれれ?

エイプリルフールネタで何かと思いきや、君達ただイチャついてるだけじゃないかっ!
( *・ε・*)