民衆の伝えた“読み人知らず”の伝承歌こそ、真のポピュラー・ミュージックだと思い知らされる1曲。

スコットランドの民謡として、広く世界に歌い継がれてきたのがこの「ウォーター・イズ・ワイド」です。

一説には17世紀に生まれたとありますが、真偽のほどは不明です。ただこの曲を多くの日本人が知ったのはこのカーラ・ボノフのアルバムの最後に「悲しみの水辺」という邦題で収録されていたヴァージョンによるものです。以来このアルバムはこの伝承歌をつなぐ定番として引き継がれています。

カーラ・ボノフ

From Album "Restless Nights"(1979)
録音に参加したメンバーもそうそうたるもの。

Bass-Kenny Edwards
Acoustic guitars-Karla Bonoff and James Taylor
Accordion-Garth Hudson
Background vocals-James Taylor and John David Souther





この歌は、フォーク・グループのウィーヴァーズが取り上げて有名になったトラディショナル曲です。カーラ・ボノフが13歳のとき、ギターを習っていたフランク・ハミルトンから教えてもらった、とカーラ自身がライナーノーツに書いています。

そのフランク・ハミルトンは、ピート・シーガーが中心となってフォーク・ソング運動を支えたザ・ウィーヴァーズのメンバーだった人。アメリカで「ウォーター・イズ・ワイド」を取り上げて広げた中心人物の一人でもありますので、カーラのCDには編曲者にピート・シーガーとならんでフランク・ハミルトンの名前もクレジットされています。

そのピート・シーガーのヴァージョンもYouTubeにはありましたが、果たしてこれがピートだけの歌唱によるものか、またザ・ウィーヴァーズによるものか、定かではありませんが・・・。




さきほどこの歌に「悲しみの水辺」という邦題がついて紹介されたと書きました。

過去のマイ・ブログでは、邦題のつけ方に感心した名訳もあれば、納得のいかない邦題もあることなどをつらつら書いてきましたが、さて皆さま、以下の原歌詞をジョーン・バエズの歌声を聴きながらお読みになり、このタイトル「悲しみの水辺」がこの歌に相応しいかどうか、ご意見などお聞かせ願いたく。

歌詞はジョーン・バエズのサムネイルの下に貼り付けておきます。




♪The water is wide, I can't cross o'er
And neither have I wings to fly
Give me a boat that can carry two
And both shall row, my love and I

Now love is gentle and love is kind
The sweetest flower when first it's new
but love grows old and waxes cold and fades away
like morning dew

There is a ship and she sails the sea
She's loaded deep as deep can be
But not as deep as the love I'm in
I know not how I sink or swim

The water is wide, I can't cross o'er
And neither have I wings to fly
Give me a boat that can carry two
And both shall row, my love and I
And both shall row, my love and I



何回か読むと、ボクは全く別ものの、しかも日本の、しかも歌謡曲を連想してしまいました。

石本美由起・作詞、船村徹・作曲、ちあきなおみ・歌「矢切りの渡し」(笑)です。 ⇒マイ・ブログへリンク

もうひとつ連想する歌、それは「マイ・シップ」(アイラ・ガーシュウィン作詞、クルト・ワイル作曲)という曲です。

いずれも舟にて“いまは漕ぎいでな”とする人間の決意を表しています。「矢切りの渡し」は愛の逃避行の緊迫感が、「ウォーター・イズ・ワイド」には、これからの人生という大海を渡るための舟を与えたまえとする願望がみなぎっています。


その決意を前にして「悲しみ」という形容詞は相応しくないのでは?というのがボクの見方です。

またマイ・コレクション、『The songs of Pete Seeger』(2枚組トリビュート)のライナーノーツに「私たちはみんなこの世の誤解の大海原を渡らねばならない、とピートは強調している」と書かれています。いかにも公民権運動など、歌とともに戦ったピート・シーガーらしいコメントだと思います。


もちろんいろんな考え方があっても不思議ではありません。


マイ・ブログ、あまりこういう問いかけはしてきませんでしたが、たまには皆さまのご意見もお聞かせ願えればと思います。

いただいたご見解をサマリーして、次回「ウォーター・イズ・ワイド」2回目にてご紹介したいと思います。

などといいながら、普段からコメントがあまり集まらないpopfreakブログですので、どうなるか分かりませんが・・(汗)。