良平は春江に関するデマの出所と内容を詳細にまとめた文書を町役場の健康推進課に提出。

そして、このような事態は町民の健康維持にも影響しかねないと、町の対応を求めた。

佐伯課長と中野徹が対処に乗り出し、ジム内での周知、町の掲示板、コミュニティ内へ「個人への誹謗中傷防止へのとり組み」の通達がなされた。

春江は中野との関係を公には語らなかったが、中野は密かに彼女に手紙を送っていた。

「あの時、強いあなたに僕は引いてしまった。でも、今のあなたを見て本当の強さを知った。すまなかった」

その手紙をそっと読みながら、春江はジムの窓から見える青い空や、雄大な緑の山々を見上げた。

 町は再び平穏を取り戻したが、春江の心には少しだけ「人に頼る心地よい温かさ」が残った。

良平は以前と変わらず最小限の運動しかしないが、時折春江にコーヒーを差し入れるようになっていた。

「石田さん、あの時のこと、ありがとうね」

「いや、正義感が勝手に動いてしまっただけですよ、こっちも何か目が覚めた気がします」

星見町の空には今も変わらずたくさんの星が有る。

明るく輝いている星はわずかだが、その明るさは周りの星たちを見え難くしている。

よく目を凝らしていると無数の星が見え始める。

星空はこの世の中を描写したようにも見えてくるのだった。

その瞬間、少し戸惑うような思いが良平にわき上がってしまった。

このジムって、なにか不自然な感じが・・・

(完)

 

このものがたりって、ものがたりと違うんじゃない?