その夜、ジムで一人黙々とバイクマシンを漕いでいた石田良平に春江がぽつりと声をかけた。

「石田さん……少しだけ、聞いてもらえますか?」

春江は、不倫の噂のこと、そして旧友たちが去っていったことを語った。

強く見える春江の目に、悲しみと怒りが混じっていた。

「そんなことが……」

良平の胸に火がついた。

どこの誰だか知らないが、卑劣すぎるなあ……

「僕が調べてみましょう、そんなデマ絶対に許しちゃいけませんよ」

春江は驚いたような表情を見せたが、やがて小さくうなずいた。

「ありがとう、でも無茶はしないでね」

だが、良平の目には揺るぎのない決意が宿っていた。