ある日春江が立ち寄ったスーパーで、背後からかすかなひそひそ声が聞こえてきた。
「ほら、あの人よ不倫してるって……」
「まさか、あの歳で……」
春江は足を止め、顔をしかめた。
誰がこんなデマを……?
その日から町のあちこちで「春江が町外の既婚男性と関係を持っている」という荒唐無稽な噂が広がり始めた。
最初は気にしないようにしていた春江だったが、日に日に周囲の視線が冷たくなるのを感じる。
特にショックだったのは、かつての同僚の女教師たちが、春江と連絡を取らなくなったことだった。
「今はあなたと関わらない方がいいと思うの」
そんな言葉を聞き、春江は久しぶりに夜のジムで一人涙を流した。