もんじゅが燃えた
その原因を知ると貴方はこの国がいやになる。
実験炉では各種データを採取する。
センサーは鞘(さや)管に入って金属ナトリウムの流路に突き立ててある。
鞘管は町工場のオヤジが旋盤で削って作る。
「この角には普通はRを付けるんだがなあ?」
応力集中を避けるのは設計者には常識だ。
原発屋の図面にRが書かれていなかった。
まさかもんじゅの図面を学校出たてのひよっこが書いてる訳でもないだろう。
勝手なことをすると責任を取らされるから図面通りピン角で作っておこう。
オヤジの経験則は有効に作用することなく鞘管は金属ナトリウムの流路でポッキリ折れた。
漏れ出した金属ナトリウムが水分と反応してもんじゅの内部で花火大会が開催された。
原発屋はその責任を取ることよりも責任を回避することを選んだ。
事故は隠蔽され続けてついにバレた。
後に町工場のオヤジは思った。
「責任を恐れずにRを付けといてやれば良かったんかのう」
よく似たことが無数に起こるのがこの国だ。
無理強いが招いた
「バケツでウラン溶液かき混ぜていたんだってさ」
さもずさんな作業で事故は起こったように印象付けられた。
かつて東海村に存在したウラン濃縮工場で青い光が発生し2人が亡くなり数百人が被ばくした。
そんな臨界事故が現在でも起こり得るのかと世界中が驚いた。
原発屋が工場に発注してきた高濃縮ウランは夢の核燃料サイクルに関係している。
その仕様書を見て工場ではそんなものは作れないと直ぐ分かった。
仕様書を訂正すべきだがそれは無理だろう。
役所に意見する文化は共産主義のこの国には無い。
なんとしても作らなければならない。
『製品はすべて等質等量であること』
この1行が事故の真因である。
等量は可能でも等質は不可能だ、バケツを使わない限り。
その真実は国民に伝えられることはない。
事故のあとで原発屋はぬけぬけと言った。
「注文を受けないという選択肢も有ったはずだ」と。
その通り、とは誰も思わないだろう。
こんな国だ。
キリンが救った
3/11から1週間後、福島4号機の燃料プールが日本の運命を決めるかのような湯気を立ち上らせ始めた。
自衛隊のヘリが決死の上空散水を始めるが後に発電所長のYは”カエルのションベン”と例えている。
テレビでその様子を見ていた重機メーカー3社が立ち上がった。
3社はプツマイスター〈ドイツ〉、中央建設〈四日市市〉、三一重工〈中 国〉。
私達にしか日本は救えないと乗り込んできた。
彼らのコンクリートポンプ車によるチーム、通称「キリン」が日本を救った。
国が自ら救いきったのではなかった。