友人の一家が揃って横歩きするのはモクズガニを食べ過ぎたが為の遺伝子作用ではなく、

モクズガニの美味さに心酔してしまったが故の形態模写行動であるようだ。

その証拠に彼の娘は面接室に真っ直ぐ入り真っ直ぐ退出して一流企業に採用された。

しかし私は気づき始めた。

意識下でコントロール出来ない習性もちらほら出始めたことを。

上空に鳥の陰を見つけると身体が動かなくなる。

仰向けにひっくり返ると起き上がれなくなる。

血中酸素濃度が低下してくると泡を吹き始める。

もう少し経過観察をしてから処方箋をだしてあげよう。

モクズガニの爪に生える毛が恐ろしく滑らかな感触なのを知っているだろうか。

小魚がこの滑らかな毛を枕にして眠ってしまったところをモクズガニは難なくいただく。

私も子どもの頃モクズガニの毛を撫でていてうっかり眠ってしまい食われそうになったことがある。

この恐ろしく滑らかな爪の毛と強力なハサミの対比は自然界最大のトリックである。

沢山のモクズガニが捕れた場合に素人が陥りやすい過ちに「後で食おう」と飼っておくことだ。

あなたが思い出して食おうとしたときにはカニはすっかり消え去っている。

せいぜい残っているのは数本の足だけである。

”モクズガニは早く食え”これが鉄則である。