その日以来、石田良平は何かと元町会議員・大久保修一の視線を感じるようになっていた。
「あんた新しく来た人でしょ?最近よくジムに来るな。」
ある日、トレーニング後のストレッチをしていた良平に、修一が声をかけてきた。
笑顔だが、その目はどこか鋭く、探るような光を放っている。
「ええ、まぁ健康維持のためにね。・・かな?」
「……そうですか。ところで、あの連中とは係わらないほうがいいですよ。」
「あの連中?」
良平が問い返すと、修一は視線を坂井春江たちの方に向けた。
「あの連中さ。まるでジムを私物化してる。」
「ここは町民全員のための場所なのに。」
「はぁ?……それはもちろん知っていますが。」
良平は曖昧に返事をし、その場を離れた。だが、心にひっかかりが残る。
確かに春江さんたちは元気で姦しく目立つけど……そんなに悪い人たちには見えないがな。
一方で、春江たちも修一の動きに気づき始めていた。
「最近、大久保さんの視線が気になるのよね……。」
トレーニング後、ロッカールームで春江がつぶやくと、玲子が頷いた。
「私もです。なんだか、私たちをジムから追い出そうとしてるような……。」
「そうはいかないわ。せっかくこのジムができて、町のみんなが健康を維持できる場所になったんだから。」
奈央も真剣な表情で言った。
「でも、元町会議員ですよ、町役場にもまだ顔が利くはずですよ?……。」
続く・・・はず