山間の小さな町・星見町。人口はわずか5,000人ほど。四方を山に囲まれ、春には山桜が咲き誇り、秋には赤や黄色の紅葉が鮮やかに町を彩る。時間がゆっくりと流れるこの町で、最近ひとつの場所が町民たちの注目を集めていた。

それは、町が住民の健康維持のために設けた町営ジム「すこやか星見」。最新のトレーニング機器が並び、利用料は無料。町民であれば誰でも利用できるため、年配者を中心に利用者が増えていた。

そのジムで一際存在感を放っていたのが、元中学校の体育教師・坂井春江だった。60代半ばの春江は引退後も健康志向が強く、日々のトレーニングを欠かさない。指導力と情熱は健在で、ジムに通うメンバー数人を自然と率いる存在になっていた。

春江の「チーム」としてジムに集うのは、筋トレ好きの八百屋の娘・田村彩乃、ヨガを極めようとする元看護師の村上玲子、そして町役場で働く事務員の小林奈央。彼女たちは「春江先生」と呼び、慕っていた。

そんな彼女たちを快く思っていないのが、元町会議員の大久保修一だった。かつて町政に関わり、今もなお影響力を持ちたがる修一は、ジムを「自分の縄張り」と考えていた。しかし、春江とその仲間たちが中心的な存在になりつつあることに苛立ちを覚えていた。

修一はジムを管轄する町役場の健康推進課の課長・佐伯慎吾に圧力をかけ、春江たちをジムから排除しようと画策する。しかし、ジムの管理を担当する若手職員の中野徹は、修一の横暴に疑問を抱きつつも立場上逆らえず悩んでいた。

そこに現れたのが、定年を迎え町に移住してきたばかりの石田良平だった。都会での忙しい生活を終え、静かな田舎暮らしを求めてきた良平は、健康のためにとジムに通い始める。しかし、そんな彼が知らぬ間に、ジムで繰り広げられる人間関係の「火種」に巻き込まれていくことになる。

 

続く・・・だろうか