税金が投入される公共工事では受注側に「現場代理人の配置」という”やっかいな”決まり事があります。
民間物件だと工事管理は適当にゴマかして(手を抜くということではありません)済んでしまうのですが、公共工事では法に基づいた無駄なことが様々有るのです。
現場代理人とは受注者側の代表であり、発注者である役所の担当者と協議を行なうのが役目です。
1物件1人配置で原則兼任出来ない決まりなので受注企業はその分を受注金額に上乗せするのです。
そうです。税金は無駄に使われることが常套なのです。
40年くらい前でしょうか、
私の田舎から山一つ越えた村にダムが建設されました。
国が作り管理を県に投げるという、お決まりの物件です。
私の会社も一部工事を受注し現場代理人を配置しました。
何十億もの物件なら毎夜担当者と街で”友好を深め合っても”利益は得られますが2~3千万の設備工事ではそんなことはできません。
この山奥のダム建設に任命された代理人氏、当初は自然環境溢れた現場に感激し、普段食べたこともない山菜や獣肉に舌鼓を打っていたのですが、やがて飽きてしまいました、都会のネオンが恋しくなってきたのです。
自然しか無いところで数ヶ月を過す内に季節も移り変わり、氏は退屈紛れにダムが完成したら水没するであろう谷川に行き釣り糸を垂れてみました。
するとどうでしょう、まるで遺伝子に警戒心を持たないようなアマゴやイワナが釣れ放題なのです。
氏が見たことも聞いたこともないような無垢の自然がそこには有ったのです。
氏は単純に喜びを得ると共に、自分はこの自然を破壊する一翼を担っているのかも知れない?と思い始めました。
その後何度か氏と業務を共にすることが有りましたが、氏の眉間に刻まれた皺の深さに見とれるばかりで本心を聞き出すことは出来ませんでした。
現在このダム周辺の尾根に60基の風力発電所計画があります。
規模として国内最大です。
私は自然エネルギー推進賛成派なのですが、
先のこともあって大なり小なり自然破壊への一翼を担うのは避けたいとの思いなのです。
早速、お隣の奥様が風力発電所反対署名簿を持ってやってきました。
「一応、自然エネルギー推進派なんだけどね、微妙な問題だね~、署名しときましょうかね」
花子、「有言不実行は相変わらずね」
太郎、「・・・」