ずーっと苦々しく思っていた。

それはサラリーマン生活の長い年月に渡って頑なに、意固地に、思い続けてきた、今も。
『エネルギーの浪費はしない』という信条からの作用と、自分にはやるつもりになったとしても忙しくて出来なかったという安定感からだ。
お付き合い程度にラジオ体操とウォーキングをするようになった現在でも信念の骨格は崩れずに、密かに私の心中に有る。
自分の健康第一でジョギングをしたり、ジムに通いつめて無駄に汗を流したり、そんな人たちのエゴ、無知、浪費のことを嘆くのだ。
いったい自分の健康維持のためだけに筋肉を無駄に発熱させ、そのエネルギーをドブに捨てる人達が居ても良いものか?

それなら困っている被災地に行ってボランティア活動でもすれば自分の健康のためにも社会のためにも有効になって一石二鳥だろう。
需要に応じてだろうが乱立したスポーツジムにはエネルギーを無駄に捨てることを禁じさせ、社会に有効に作用させるよう義務化すべきだ。

アウシュビッツを肯定するはずも無いが人体も物質だと見立てた潔癖さには倣うところもあるのではないか。
人はエネルギーを食べて生きているのだ、食べ過ぎた分をドブに捨てるようなバカなことをやるもんではない。
それなら、食べなければ良いだろう。

スポーツジムなんてものは愚の骨頂だ、なんぼ儲かるからといって人をハツカネズミのように運動させて何が楽しいのだ。

私はだいたいが経済というものが嫌いだ、経済なんてもんは無くっても地球は回っているだろう。

・・・そこまで診察室でまくしたてたところで、医師は止めに入らないと次の予約者に影響すると思ったのか、

医師、「何か好きな運動は無いの?」

私、「無い」

医師、「あなたが健康になると、あなただけでなく社会も助かるのですよ」

私、「なんで?」

医師、「高い薬もいらなくなるし保険料も安く済むでしょう、私達医師もそのライン上に居るのですよ」

私、「次の受診日までに2kg減量ですね、Yes, sir.」