小さなエンジンがパタパタと機体を上昇させてゆく。

大きな翼に短い胴、軽く作られた機体は鳥よりひ弱な構造である。

旋回しながらゆっくりと時間をかけて上昇してゆく。

必要な高度に達した機体はエンジンを停止する。

後は風任せ。

目的地が有るとしたならば、そこへの到着時間はとても保証出来ない。

モーターグライダーとはそんなもの。

たぶん恐らく地球上で最も燃費の良い乗り物である。

あっ、気球が有ったか。

でもどうかな~。

確かに密閉型気球は燃料を要しないが行き先は風に全依存するから交通手段にはなり得ない。

モ-ターグライダーは目的地を設定することができる。

船でドイツから横浜港に着いたグライダーを操縦して三重県まで空送してきた先生が居た。

何回のモーターグライドが必要だったのかはもう忘れてしまったが、伊勢湾を飛び越えることは出来なかったそうだ。

当局が海上飛行を許可しなかったらしい。

せっかく翼を持ちながら一人前の飛行機とは扱われなかったようだ。

そうやって、

一直線ではなく沿岸地を舐めるようにして、

横浜からジグザグに滑空して来たグライダーは伊勢志摩空港に着陸した。

 

花子、「明野の自衛隊基地ね、モーターの無いグライダーはどうやって飛び上がるの?」

太郎、「引っ張り上げるのさ、凧みたいに」

花子、「へ~、大変ね~」

太郎、「大空はロマンだ」