”ヤマ”とは呼び名の通り山のことである。
妻は私の田舎の村をヤマと呼んでいたので”ヤマ”はそれも指している。
従って山=私の田舎の村に等しい。
今”ヤマ”には立ち入り禁止区域が有る。
それは”ヤマ”の95%にも及ぶ面積を占めている。
罰せられることは無いが好んで立ち入ることは自殺行為?だ。
其処は現在”ヒル”に占領されている。
”ヒル”とは蛭だ。
”ヤマ”と”ヒル”を合わせて和名”山蛭(ヤマビル)”に占領されているのだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%93%E3%83%AB
村の面積のほとんどが立ち入り出来ないとなると不便に思われるが、
元々村の人口密度は検出出来ないほど希薄で残った5%の安全地帯で人は暮らしている。
”ヤマ”は山ばっかりな訳だ。
しかし、山蛭のアジトにどうしても入り込まなければならないこともある。
先日の”ゆでぶしん”がそうだ。
”ゆでぶしん”とは集落総出の水路維持作業のことだ。
まさに山蛭との真っ向対決になる。
皆は「塩」を持ち「ヒル下がりのジョニー」を全身に吹き付けて作業に臨む。
しかし山蛭は手強い。
休憩時間に確認し合うと皆一匹二匹の山蛭が付いている。
中にはネックレスのように首に沢山の山蛭をぶら下げている人もいる。
この吸血動物は蚊のように人に行動を悟られることがない。
知らぬ間に皮膚に張り付いてたっぷり満タンになるとポロリと落ちてゆく。
いったいいつの間に首や頭まで登ってくるのかと不思議に思う。
木の枝に垂れ下がって人や獣を待ち受けていると言う人もいる。
いずれにしろ山蛭の隠密行動は山に潜むゲリラ戦士と呼ぶにふさわしい。
けれども塩にはひとたまりもなく一つまみであっけなく即死してくれる。
昔はこんな所にまで山蛭はいなかったのにな~と皆はいう。
本来はもっと山深い(”ヤマ”も十分山深いが)所に山蛭はいたらしい。
生態系の変化は厄介なことを引き起こす。
”ヤマ”のゆでぶしんは夏場の作業が草刈り主体になる。
日頃田んぼの畦草刈りで鍛え上げた猛者達に混じって私も草刈り機を使う。
去年は斜面を滑り落ちて足を刈られそうになったので今回は高い場所には行かなかった。
湿気が高くマスクをしてるとゴーグルが曇ってきて作業がはかどらない。
途中でマスクを外したがそれでもゴーグルが曇る。
皆はこのようなフェイスシールドを使っている。
私はメッシュのゴーグルを仕入れた。
これは曇らないだろう、当たり前だが。
”ヤマ”の暮らしには都会では要らぬものが色々必要になる。
水指 銘:蛭口
Kenichi Museum


