一日中すっきりしない天気であった。
朝靄(もや)はそのまま夕靄(もや)となって過疎の村を覆い尽くしてしまった。
一見飛騨地方の歴史的価値有る里を忍ばせるような風景だが実態はもっと疲弊している。
自然がもたらす気まぐれな演出も其処に暮らす村人にとっては見飽きた風景だ。
村人は此処から逃げだすことは絶対に出来ない。
先祖からの墓と土地と家を引き継ぎ、死ぬまで何の楽しみもなく精気を吸い取られていくのだ。
何か変化を起こせないものかと思う。
はじけるような楽しみが舞い降りてこないものか、この靄(もや)のように。
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私が「玉ちゃんの梅」と呼ぶ梅の大木はもうすぐ満開を迎える。
たまに都会の雑踏を逃れて訪れるなら見事な風情ではある。
灯りの近くには今父母が暮らす介護施設が有る。


