田舎のお隣のおばあさん。

母と同い年だから90歳。

足腰もしっかりして頭もはっきりしている。

昔話を始めると幼少の頃からの話をはっきりした記憶のもとに話してくれる。

80年以上も前のことを、である。

心身共に健康な老人の見本のように私は思っている。

 夕刻に私を訪ねて来てこんなことを打ち明けてきた。

「同年輩の仲間が皆居なくなってしまい、私は寂しい」

父母を含めて数人がおばあさんの周りから消え去った、残った世代ギャップのある周囲の人達とは合わないのだろう。

「家に居ても私にはすることが無いのが辛い」

そう言えば近頃農作業をしたり出歩く姿を見無くなっていた。

傍目には健常そうに見えても家人にとってはそれなりに危ういものがあるのだろう。

おばあさんは家での存在を悩み始めたようだ。

「子供たちに相談して施設にショートステイすることにした」

自分から子供たちに希望を言って決めたそうだ。

先日父母のホームに自ら入ってきたおばあさんと重なるものがある。

何というか、仲間が、欲しいのだろう。

人はいくつになっても仙人のような生活は出来ず仲間と交わりたいのだろう。

母のように人と交わることを嫌う人は稀だ。

母には無理だが、お隣のおばあさんに施設で話し相手が見つかるとよいのだが。