新米が獲れた。

稲刈りの日に私も少々お手伝いをしたが、今年の収穫は去年より減ったようだ。

農家は1反当たりの収穫で判断するのだが、Hさんの目標である10俵には遠く及ばず7俵半くらいか。

Hさんは2反少々の田んぼを作っているので20俵ほどの収穫がないと例年通りの売り先に米が回らない。

中山間地である私の田舎では、収穫量が少なく、流通市場には出回らず知り合いに直接売買するのが普通だ。

苗代、肥料代、農薬代、農機具の減価償却をトータルすると数十万の赤字になる。

担い手が少なくなってきた稲作農家には里山維持の観点から僅かな補助金が国から給付される、

採算を追えば阿保らしくなってしまうが、Hさんは稲の生長を見るのが楽しいんだという。

硫安をはじめとする化学肥料農法は工業製品の製造過程で出る廃棄物の受け入れ先とも言え、

国はずっと国策として工業振興のために農家をおろそかに扱ってきた。

消費者目線としては米価は相変わらず家計の気になる要素ではあるが、

実は以下(抜粋)のような事実もあるのだ。

 日本の農業ほど「保護されていない農業」は、世界に類例を見ない。

そんなバカな!と、思われる人が多いだろう、

アメリカは自国産穀物輸出のために、毎年1兆円を上回る「輸出補助金」を出している。

アメリカの農家が輸出を伸ばしているのは、元々(国土的条件から)生産性が高いことに加え、政府が補助金を出し、輸出を奨励しているためなのだ。それに対し、日本の農家に対して、輸出補助金は出ない。

輸出補助金以前の問題として、そもそも農家の所得に占める「財政負担(要は税金からの支払い)」が主要国の中で最も少ないのが実は日本なのである。欧米諸国はどの国も唖然とするほどの財政負担を継続し、農家の所得をかさ上げしている。

日本の農業所得に占める財政負担の割合は15.6%である。それに対して、アメリカは全体で26.4%、穀物農家に対しては50%前後。欧州に至ってはフランスが90.2、イギリスが95.2%、スイスが94.5%と、信じがたいほどの高水準になっている。

欧州の農家が稼ぐ所得の90%超が、税金から支払われているのだ。ほとんど「公務員」と同じである。なぜ、欧州の農業所得に占める財政負担の割合が、90%を超えているのか。理由は簡単、そうしなければ外国との競争に敗れ、自国の食料安全保障が崩壊してしまうためだ。日本同様に人件費が高く、米豪のように「広大な農地」に恵まれているわけでもない欧州諸国が、農業分野で外国と真っ向から競争すると、生産性の違いから敗北することが明らかなのである。

美味しいコシヒカリがいつまでも有ると思っていては間違いなのだ。

Hさんは言う「温暖化でインディカ米に変わってくるかも知れないしなあ」。