次なるドキュメント
2016年春、妻は介護保険の要介護申請を行い認定審査日に先だって介護用品の使用を始めた。
この頃の妻の状態は杖だけでは心許なく、歩行器の使用が必要になっていた。
ベッド脇や洗面所・トイレなど体位移動箇所には手すりが必要になったがマンションの薄っぺらなボード壁に手すりは付けられない。
有る日私が帰宅すると室内には突っ張り型の手すりが林立していた、ジャングルジムのように、床と天井に突っ張る縦型の手すりだ。
健常者にとっては邪魔な突っ張り手すりも障害者にとってはなくてはならないものだ。
介護用品には良く工夫された便利なものが多く有る、歩行器はマグネシューム合金の超軽量品で羽のように軽い。
妻は社会福祉士として福祉の世界に長けているので要介護者になった自身の介護計画は自分でテキパキ進めていった。
介護保険・特定医療・障害年金・障害福祉サービス等支援策はもれなく申請しすべて認定された。
多系統萎縮症は助かるすべのない難病である、いつか寝たきりとなり体がすべて動かなくなり意識は脳内に閉じ込められてしまう。
稀なる「悲劇の病気」は1万人に1人くらいしか存在しない。
妻は自分の運命を受け止めて明るく気丈に振る舞っていた。
私はアルコールの霧の中を彷徨っていた。