現在進行形

フクロウとカメを見た話。

以前に記したかもしれない、その場合はゴメン。

退職を目前にしていた夏。

アルコールの中に沈んでいた。

いつも持ち歩いていたバッグを無くしたり、電車で駅を乗り過ごし戻る電車で又乗り過ごすようなこともあった。

最寄り駅から家に帰る途中でくすの木の並木通りを歩いていると、毎夏くすの木に集まり騒々しい椋鳥がいないことに気付いた。

その頃椋鳥退治に鷹を放すような話を耳にしていた。

此処にも鷹が放されたのだろうか?

それにしては時間が遅すぎる、鷹は夜行性ではないだろう。

そのときくすの木の枝にフクロウを見つけた。

まるい目が私をじっと見つめている。

ああ、フクロウが椋鳥を追っ払ってくれたのか。

そう思って真相を知ろうとしたがフクロウを放したり目撃したという情報は無かった。

自然のフクロウがこんな街中に居るはずはないし、

あのフクロウは幻だったのか。

私の脳はフクロウが止まっていた枝まで鮮明に覚えているのだが、まるい目もハッキリと。

 

同じ頃近くの水路で大きなカメがもがいているのを見た。

外来種のカメが放され増えて困っていると耳にしていた、噛みつきガメとかいうやつだろう。

いかにも凶暴な姿をして手足をバタバタさせていた。

翌朝水路を見ると巾は1メートル以上もあるではないか、この巾でもがくカメなんて大きな海ガメくらいだぞ、そんなに大きくは無いだろう噛みつきガメは。

もちろん近くで噛みつきガメが捕獲されたとの情報もない。あのカメは幻だったのか?しかしリアルに覚えているんだよなあ私の脳は。

この目撃経験は長く私のなかで真実だったのか幻だったのか解らないままであった。

夢や幻であったと結論付けるにはあまりに脳が詳細な映像を記憶していたから半信半疑の信の方が強かった。

 

「フクロウはあんたが助けてもらいたい人の象徴、もがいてるカメはあんた本人、どちらも幻覚で自分の心が創り出したものだよ」、姉にそう分析されて一旦納得した。

しかし、今でも通るたびフクロウが止まっていた枝を見上げ水路にカメを探してしまう。

今もまだ何か真相は違うように脳の片隅で思っている。