高校の先輩だったじょうじ君。
注目のプリンス「ジョージ」
125cc5速ミッションを巧みに操る。
毎朝繰り返されたことがあります。
通学列車を待つホームに遠くから聴こえてくる排気音。
10000RPMの甲高い音。
こっちに向かって近づいてくる。
田園路から街に入り3回のシフトダウン音が聞き取れた。
高音のまま音量は大きくなってくる。
一旦停止で止まないのもいつものこと。
駅前のT字路からもうすぐ現れるはず。
2速10000RPMで現れたじょうじ君。
音の割りには・・遅い。
駅までの200メートル。
高周波音はそのままに最後に1速にギヤダウン。
歩くような速度なのに悲鳴を上げるエンジン。
ホームの待ち客は一斉に目を向ける。
いつもの駐車位置でやっと静かになった。
じょうじ君はギヤダウンで減速する。
回転計の針はいつでも真上付近にある。
じょうじ君はブレーキの存在を知らない。
いや、
本当は知っている。
でも、
じょうじ君はパワーバンドに恋をしていた。
だから、
減速してもパワーバンドは外したくない。
そして、
音の割りに遅い自分も知っている。
しかし、
そんなことはどうでもよい。
なぜなら、
パワーバンドの高揚が楽しくてしかたないから。
それより10年くらい前、
多段ミッションを職人技で操縦した60年代のレース。
少しでもエンジンパワーを上げるのが勝つ為の本道であり。
ブレーキなんぞにかまってる暇は無かったかもしれない。
今の市販車にも劣るパワーだったこの頃、
ライバルに勝つには、
路面を少しでも多く蹴り続けることがキモでした。
日本でモータースポーツが開花し始めた60年代初期、
老舗の小排気量職人が極東で生まれたサーキットに苦い名を残した。
エルンスト・デグナー
http://www.iom1960.com/other/
毎年終わってから知るが、
今年の8耐、
久々に、
どうした訳か興味が湧く。
あの音を実際に聞きたいが、
暑いから出掛けないだろうな。