今でもたんまに悪戯をするのですが、
一級建築士大工のKとは幼いころからの付き合いです。
同級生で共にアルコール依存症。
幸福感は女房から遠ざかる程に増加するのも同じ。
遊び事にも相通じるものがあり、
嗜好は、美形~豊満~清楚~あおりイカ、と進化してきた。
Kと私の関係は、
ボケとツッコミが状況次第で入れ替わる阿吽の呼吸の域なのです。
十代の一時期、
どうしてもKには敵わないと悟らされたことが有りました。
Kはコーナーがやたら速いのです。
同じバイクで良く似た体格なのに、
直線では対等でもコーナー区間で差をつけられる。
どうやってもKの速さには追いつけずテクも盗めないのです。
なにかが根本的に違う、魔法の走り方だと思っていたのです。
しかしあるとき、
一瞬で謎は解けてしまったのです。
ブラインドコーナーの先の危険性について会話したときにKは、
「こんな田舎道では対向車は来るはずがない」と言い切ったのです。
速いはずです。
Kの走行ラインは対向車を想定せずに描かれていたのです。
Kの脳は確率論で統制されていたのです。
ブラインドコーナーの先にはファンファーレ以外は待っていなかったのです。
この割り切り方の違いが永遠に詰まることのないKと私の差なのです。
Kの作品にみられる凡人には解せぬ冴えはこの思考が作用しているのでしょう。
私が家を建てるとしたらKだけには内密に進めたいと思っているのです。
私情の話は置いといて、
さて、もう一度動画を見てみましょう。
片手ステアでカメラを持ちゆっくり走行しています。
大きく画面が揺らいだのは行く先に誘導員を視認して両手ステアに変えた時です。
貴方は画像が動揺する直前に誘導員を視認できましたか?
ブラインドコーナーでは最新情報が出てくる一点のみを注視することが大切です。
処理に要する時間的遅れを最小限にするには、
把握済みの視界に浮気目を流していてはいけません。
悠長なことをしていると、
その後の人生をベッドで天井を見続けることになります。
Kのような先天的能力を持ちあわさなくても、
自分の能力範囲の中で最善を尽くしたコーナーワークの先では、
充実感により自身の心にファンファーレが鳴り響くはずです。
たとえ小僧っ子が鼻くそほじりながらアウトから抜いていこうともね。
危険度の感受性は各々で異なります。
安全第一ならバイクなんぞ乗らぬのが一番です。
危険に惹かれて乗るのでしょう、
危険の先の喜びを知ってしまったからには、
存分に楽しむことです。