善人です、お人好しです。
65歳まで第一線級戦力を維持して戦い、惜しまれつつ退任されました。
敬意を表して、m氏のことを書かせていただきます。

 寒い冬の朝、釣行に出発しました。
m氏の家から車に便乗させて頂きました。
フロントガラスが真っ白に凍っています。
南国℃人のm氏にとっては経験少ない現象です。
m氏は素手でフロントガラスをこすりました。
冷たさに耐えられなかったのでしょう、
運転に必要な最小範囲を何かでガリガリこすり、すぐさま運転席に戻りました。
覗き穴から外を見るようにして運転をしています。
やがてヒーターが効き出しフロントガラスの視野が広がっていくと。
どうゆう訳なのか?
覗き穴だった所だけ、ガラスが傷だらけなのです。
それは非常に効率よく運転席からの視界の邪魔になっているようです。
三半規管の無いm氏は運動法則を無視した素早い動きで車から降り傷を確かめます。
戻ったm氏は助手席の私に左腕を突き出して見せました。
無言で、苦笑いをしました。
腕にはm資金で購入した高級時計のサファイアガラスが光っていました。
幸先の悪い(私には一種愉快な)釣行だったのですが、釣果には恵まれ、
m氏のご近所さんや私にとっては、豪勢な食卓となったのです。
m氏自身はあんまり魚を食べません、
奥様が魚嫌いですから。
上手に魚をさばける腕を持っているのですが、残念な家庭環境です。
次の釣行時にはフロントガラスは新品になり、
その件はすっかり忘れ去られていました。

m氏とは・・・そんな方なのです。