星野源 Live Tour 2017『Continues』 千秋楽 | poetissimo

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思いを。
言葉を。
もっと、強く強く。

それが『ポエティッシモ』。





「未来をよろしく。」

昨年5月、敬愛する細野晴臣さんのライヴ『A Night in Chinatown』に
ゲスト出演した際、星野源くんはそう言われ、すぐに返事が出来なかったと
言います。

何気なく言ったのだろうと考えながらも、これからの音楽を直々に託された
と受け取れてしまうエピソードを経て生まれた曲が、「この世にある音楽は
全て繋がっている」
との思いを込めた『Continues』。

その名を引っさげ行われてきたアリーナツアーも遂に10日、さいたまスーパー
アリーナにて千秋楽を迎えました。


歌謡曲先輩(声・大塚明夫さん)と、J-POP後輩(声・宮野真守さん)による、
音楽をテーマにしたボイスドラマが迫る開演への期待をじわじわ高めたのを
受けた一曲目は、源くんがセンターで自らマリンバを叩く『Firecracker』。

それは晴臣さんも長きに渡り演奏している、マーティン・デニーのカバー
でした。


前日も含め今回のたまアリはスタジアムモードにまで目一杯客席を広げ、
その規模は前ツアー『YELLOW VOYAGE』の1.5倍の3万人!

最初のMCから源くんは「ありがとう」が止まらず、「お客さんの熱量がすごい
高い」と率直な感想を。


ツアー開始と同時期にMV集がリリースされたので、初期の三作『くだらないの
中に』、『フィルム』、『夢の外へ』を順に唄う前には制作において試行錯誤を
重ねていた事と、3.11の影響による世間の自粛ムードが絡み合った当時に触れ。

容姿の変遷を「苦学生から元気になっていく様子」、「しょぼくれていた
でしょ?」と例えながら、「明るい曲を作りたかった」と。

先日の横浜公演ではこの部分で、「(音楽が)聴く人に寄り添ったり楽しく
なったり、外に出たくなったりしてくれたら」とも話していました。


恒例の一流ミュージシャンからのお祝いメッセージが、バカリズム、ロバート
秋山くん、バナナマンが扮した豪華メンバーにより続いた後は、会場中央の
サブステージに移動しての弾き語り。


「ハタチの頃にすごい衝撃を受けて、大好き」な、NUMBER GIRLの「透明少女」。

この日の前口上は、「何か匂いで急に思い出す事ってないですか?」と
切り出された、亡きおばあちゃんの話。

プレゼントされた急須で久しぶりに好きな緑茶を入れた時、その匂いで八百屋を
営んでいたおじいちゃんといるおばあちゃんの記憶を思い出し、幸せな気持ちに
なったそうで。

「おばあちゃんがいなかったら自分はいないんだなぁって・・・
(事も思った)」と、家族の形態からも自身へと継がれているものを振り返る
ひとコマがありました。


「くせのうた」では、曲を作り始めた中学生の時に遡り。

アルバム3枚分、ボーナストラックやシークレットトラックも入れたカセット
テープを自作するも、「その頃は誰かに聴いてもらう度胸がなかった」。

そして今。

「特に行く宛てのなかった歌を、3万人の人に聴いてもらうのは幸せ」と、
静かな口調の中に喜びを満たしていました。


後半戦へのインタールード、YMO『Mad Pierrot』のカバーでELEVENPLAYも
登場し、煌びやかな光と音、フラフープを用いたダンスがステージをエキゾ
チックに染め上げれば、観る者の心は更なる陶酔境へと導かれ。

続く『時よ』は、やはりハタチの頃に出会ったこの曲の影響を受けて作ったと、
今ツアーで明かしています。

ダンサブルなゾーンのイエローミュージックに合わせ、MCで委ねられた通り
自由に唄えや踊れと化している客席の様(さま)に、「ぐちゃぐちゃ最高!」と
源くんも満悦至極の声。


3万人の人いきれに包まれながらの『恋』は、言わば狂騒の坩堝(るつぼ)。

恋ダンスも、放たれた金テープを掴む為に伸ばされる幾多の手も、何もかも
熱を伴っては夢か現かの境目が失くなって見えてきます。


本編ラストの『Continues』を控え、源くんは会場にいる誰よりも終わりを
惜しみ。

「正直帰りたくない、楽しいんだもん。素晴らしい千秋楽ありがとうござい
ます」と、感謝の言葉を。

まるで遺伝子の様に音楽は繋がっていく、必ず何処かに繋がっていくという
無限の可能性と希望を、皆と高らかに謳い上げました。


ライヴでの披露が待たれていた新曲『Family Song』は、今回の追加公演2days
アンコールから。

緩やかなソウルミュージックのテンポに左手でリズムを取りながら身体を
揺らし、歌声はファルセットを使いこなしながら甘やかに。

加えて歌詞にある“祈り”の部分で両手を合わせる仕草を見せる佇まいが、
まるで仏様のものかと感じられてしまう優しさに溢れ。

そんな思いに一瞬浸っていた所、当の源くんは1番のサビで客席の赤ちゃんの
親子を見かけたら「ウッとなって(=込み上げて)しまった」そうで。

図らずも目の前の光景が、楽曲が描くメッセージに色を添えていた訳ですね♪


そして楽しくも感無量、温かい拍手が止まない中、「これからも曲を作って
色々頑張っていきますんで、星野源を何卒宜しくお願いします」と抱負を
述べ、4ヶ月に及ぶツアーを締め括ったのは『Friend Ship』。

アウトロで一段と力強く鳴らし、響き渡るギターの音色。

意味合いがまた違うとはいえ、SAKEROCKの解散ライヴで顔を歪め泣いていた
姿が自然に重なってきたのは、きっと感極まっている表れなのだろうと
思いました。


多忙による疲労の蓄積からか、全体的に唄い方が喉を庇っていると言うのか、
やや声に元気が足りなく聴こえた点が気になりましたが。

(休む間もなく翌日から既に、ドラマ『コウノドリ』の撮影も始まっています。)

そこは会場と声質の相性も関わってくるでしょうし、3時間を超える千秋楽は
老婆心を補って余りある充実した高揚、清福をもたらしてくれました。


“時代を超え、世代を超え繋がっていく”、自身を培ってきたルーツとなる音楽。

“どの一つもなければ最近の歌はない”、自身が試行錯誤して作ってきた音楽。

その両方を組み合わせ、丁寧かつ一貫して源くんが伝えようとしたコンセプト
は、開演前のSEで晴臣さんの楽曲と共に流れていたマイケル・ジャクソンや
プリンスからも感じられて。

今回『SUN』の印象が少し変わり、余韻の随(まにま)に意識して聴き返して
います。


千秋楽までにまだ、5枚目のアルバムのお知らせは聞けなかったものの。

既発曲、未音源化の曲、このツアーを経験しただけでも何かとんでもない、
昇華されたイエローミュージックが新たな音楽の景色を見せてくれる一枚に
なるのではないかと、楽しみが一気に膨らみました。





読んでくれて、ありがとう。



* SET LIST *

1.Firecracker (Martin Denny) 2.化物

3.桜の森 4.Night Troop 5.雨音

6.くだらないの中に 7.フィルム 8.夢の外へ

9.穴を掘る 10.透明少女 (NUMBER GIRL) 11.くせのうた

12.Bridge Over Troubled Music ~ Mad Pierrot (Yellow Magic Orchestra)

13.時よ 14.ギャグ 15.SUN

16.恋 17.Week End 18.Continues


En.① 【ニセ明】
19.君は薔薇より美しい (布施明) 20.Drinking Dance ←星野くんのカバーという設定(笑)。

En.②
21.Family Song 22.Friend Ship


(横浜公演で撮影していた歴代ジャケット&アーティスト写真と、『恋』MV衣装の展示です。)