ゴールデンウイークが終わろうとしている。

となると花粉も終わるのだろうか?

今年の花粉はほんっっっとにひどかった。「ほん」と「と」の間にちいさな「つ」を最低でも三つはつけないと気が済まないくらいひどかった。

聞けば今年のヒノキの花粉の飛散量は去年の40倍以上らしいではないか!

ネットで調べたらそう出ていた。私は鼻が詰まって苦しくなるとネットでいろいろと調べる。そこで怒り、落胆し、仲間を見つけるとほっとした。

去年見つけた仲間はヤフー質問箱で

「スギ植えたの誰ですか?」

 と聞いていた。私はこの質問の中に怒気を見る。

「旧林野庁ですよ」

 と誰かが答えて、私は「そうか。旧林野庁か」と奥歯をぎりりと噛みしめながら覚えた。質問者もきっと奥歯をぎりりといわせていたはずだ。

今年発見した仲間は質問箱で

「花粉症で行政訴訟を起こすことは可能でしょうか?」

 と質問していた。訴訟を起こすなら私も一丁噛みたい、と思ったところ、回答者に「無理ですね」と一蹴されていた。

「国策でスギを切れ」

 と提案している仲間もいた。この案は「山の所有者は個人なので無理でしょう」と極めて穏やかに諫められ、読んでいた私まで無力感に打ちひしがれた。

 

 ティッシュを一枚抜く。三つに折ってハチマキのような細長にし、はしからクルクル巻いてピストルの弾状にする。最後にきゅっと捩じって巻きが解けないようにしなければいけない。ティッシュは柔らかい奴だ。名前を鼻セレブという。いつもは「五箱188円 おひとり様ひと箱限り」の安い奴を買っているのだが、このシーズンだけは奮発する。名前の通り「鼻だけセレブ」状態だ。

 10個ほど作り、チョコが入っていたかわいらしいカンカンにいれる(カンカンだけでもかわいらしいのにして自分を慰めている)。カンカンはベッドの枕元に置いておく。

 朝方、モーニングアタックで鼻が完全に詰まった時の備えだ。

 鼻は完全に詰まる。両方とも詰まって息ができなくなる。呼吸困難で目を覚ました時の気分は最悪だ。

 鼻に点鼻薬を噴霧する。吸い込めないから、薬の液体が垂れてくる。この時こそティッシュの弾丸の出番なのだ。カンカンから取り出して鼻の穴に突っ込む。その上でマスク装着、再び眠りに落ちる。

 夫はこのティッシュの弾を「テポドン」と呼ぶ。

 時折、夢うつつの私は鼻から弾丸をもぎとってぶん投げるらしい。きっと眠りながらいろいろ不快でもがいているのだろう。

 ある時、彼は寝ている自分の頭上を越えて向こうに飛んでいくティッシュの弾丸を見た。油断してると空を切って飛んでいく危険物――そういう意味で「テポドン」と名付けたそうだ。

 夫にも苦労させている。

  

 弾丸を作りながらこんな想像をした。

 

 私は仲間と山に向かう。なだらかな斜面が続き、そこでは50がらみのおっさんが横一列に並んで杉の苗木をせっせと植えている。私はその苗木を引っこ抜いて谷底めがけて投げつけるのだ。

「こんなもん、植えるな!!」

 おっさんは腰を上げた。腕には「旧林野庁」という腕章を巻いている。彼は軍手をはめた手の甲で黒縁眼鏡を押し上げ、こちらを見た。

「戦後はね、いそぎ材木を調達する必要があるんですよ」

 極めて冷静に言った。

 私は「どんぐりでも植えとけばいいじゃんかよう!」と言いながら苗木を引き抜き、力任せに投げつける。

「そうですよ。どんぐりだったら山の動物たちだって食べ物に不自由しなくてすむでしょう」

 言ったのはヤフー質問箱で「国策で杉を切れ」と提案した人だ。

「杉は成長が早いんですよ」

 旧林野庁は二ッと片方の唇を上げて笑った。

「どれだけの国民が苦しんでいると思ってるんだ!」

 「行政訴訟」の質問者が声を荒げた。

「私どもは国の林や野っぱらのことだけ考えてればいいんでね」

 私は旧林野庁にとびかかった。豆タンクの異名を持つ私の体躯が宙を飛び、出っ腹が彼を吹っ飛ばした。旧林野庁は仰向けにひっくり返った。すかさず私は馬乗りになり、こぶしを振り下ろした。役人の黒縁メガネが飛んで、ポマードでなでつけた髪がさんばらになる。

「プーデルさん、暴力はいけない! 暴力は振るった方が負けだ!」

 「植えたの誰?」の質問者が私を引きはがしにかかる。殴られながら旧林野庁は言う。

「殴ったって止められないんだ。花粉症だけが問題か? ちがうね! PM2,5だって黄砂だってある。これはな、経済発展を含めた地球規模の問題なんだ! 殴ったって、苗木を引き抜いたって同じ。悔しかったらハエトリ紙みたいな鼻毛でも伸ばすことだ。ハッハッハッハッハ」

 私のこぶしが宙で止まった。 

 黄砂にPM2.5……。そうか……。

 私たちは立ち尽くした。

 いつか仲間と一緒に海を渡り、中国を目指そうと思う。空想の中でだけど。

 

 最後にいい話をしようと思う。

 今日、ムスメと散歩に出た時に聞いた話だ。

「NAOさんが言ってたんだけどね」

 NAOさんとは幾度となくこのブログにも登場している美人霊能者だ。

「NAOさん、木と波長を合わせて話をすることができるんだって。で、ある時、すごく暑くて雨も降らず、道の草木もしおれているときに、大丈夫かなと思って西麻布の街路樹に波長を合わせてみたんだって。そうしたらこちらが心配するよりも早く『頑張って』ってこちらを励ます意識を送って来たんだって。道路際に植えられてる街路樹がだよ。ほこりだらけ、排気ガスだらけの最悪の環境の中に植わってるのにさ。人間を気にかけて励まし続けてくれてるんだって」

「スギやヒノキも花粉飛ばしなら応援してんのかな」

「かもしれないよ。木って人間よりもはるかに慈愛に満ちてるんだって」

 五月の心地いい風が吹いた。風が吹くと鼻がむずむずしてくしゃみが出た。

「でっかい音!」

 ムスメが笑った。

 私は鼻をすすりながら、空想の中とはいえ苗木を引っこ抜いたことを恥じていた。

 

さて告知です。

 

まずは来週5月12、13日デザインフェスタにムスメの桃子が出ます。

自作のCDとおばけグッズを出しますので、デザフェスにお越しの方はどうぞ覗いてやってくださいね。 ブース J415です!

 

7月1日に渋谷のライブハウス「サラヴァ 東京」「あの世のお話会」を開きます。
 今回は12:30からを予定。出演者はいつも通り、私とNAOさん、杉山弘幸ですが、それに  加えて今回はスペシャル企画! 朗読劇も開きます。
 演じて下さるのは11月の私のお芝居にも出演してくださるプロの役者さんです。
 詳細はまた近いうちにUPしますのでお楽しみに!
 
私、プーデルの初脚本、芝居「見えない同居人」の日程が決まりました。
 11月21日~25日 8公演
 場所は中野のMOMOという劇場です。
 これもまた詳細が決まり次第、お知らせしますね。
 
 以上、どうぞよろしくおねがいします!